悪性高血圧症
アクセイコウケツアツショウ
【英】malignant hypertension
=悪性腎硬化症
悪性腎硬化症 アクセイジンコウカショウ 【英】malignant nephrosclerosis 【独】maligne Nephrosklerose 【仏】ne´phroscle´rose maligne 同義語:悪性高血圧症malignant hypertension
腎の小・細動脈にフィブリノイド壊死と増殖性動脈内膜炎の認められる腎硬化症*である.糸球体*の壊死性変化をみることもある.本症は多くの場合,悪性高血圧症候群で認められ,著明な拡張期高血圧,眼底の乳頭浮腫,腎機能障害などが認められる.しかし臨床的には悪性高血圧でも組織学的には悪性腎硬化症の像を欠くこともある.成因の詳細はなお不明であるが,レニン・アンギオテンシン系やその他の体液性因子,免疫や血液凝固因子などの関与が想定されている. |
→高血圧
高血圧 コウケツアツ 【英】hypertension(HT), high blood pressure 【独】Hypertonie, Hochdruck 【仏】hypertension
一般臨床では大循環系の安静時動脈圧が異常に上昇した状態を高血圧と略称し,肺高血圧症*(肺疾患などでみられる肺動脈の高血圧)や門脈高血圧(肝疾患でみられる門脈血圧の上昇,門脈圧亢進症*)とは区別される.また運動・情動などに伴う一過性高血圧は単に反応性血圧上昇と述べられることが多い.高血圧は発熱や頻脈のような症状の一つにすぎないが,高血圧を示す患者の寿命は生命保険・医療統計上明らかに短いことから一つの臨床疾患名として扱われる.血圧は個体内変動に加えて個体間変動が大きいので,その判定は世界保健機関(WHO)の基準が頻用される.すなわち成人の正常血圧は140/90mmHg未満,高血圧は160/95mmHg以上(いずれか一方または両方)と約束され,その中間は境界域高血圧*と呼ばれる.高血圧を示す患者の90~95%は原因不明の本態性高血圧〔症〕*であり,原因の明らかなものは二次性高血圧*と呼ばれ,治療上の相違がある.高血圧の成因は血液を押し出す側(心拍出量)と受けとめる側(血管抵抗)の不均衡に求められるが,これに関与する因子は年齢・遺伝体質・食事習慣・社会習慣・体液ホルモン異常など多数あって,個々の例で各因子の関与程度を同定するのは困難なことが多い.病因・成因のいかんを問わず,放置された高血圧では脳・心・腎の血管病変が進行し,生命を脅かす.一般に高血圧の治療方針は初診時拡張期血圧が115mmHg以上の場合,あるいは主要臓器合併症がみられる場合には,なるべく早く降圧治療を開始する.大部分の高血圧の血管病変は慢性に徐々に進行するが(良性高血圧〔症〕),中には短時日のうちに拡張期血圧が上昇し(>140mmHg),急性の血管障害事故をもたらすものもある(高血圧性緊急症hypertensive emergency).後者には高血圧性脳症*(頭痛・意識障害など),悪性高血圧〔症〕 malignant hypertension(眼底の乳頭浮腫・腎不全,悪性腎硬化症*など),解離性大動脈瘤*などがあり,いずれも入院して速やか,かつ強力な降圧療法を行わない限り予後不良となる. |
→高血圧性脳症
高血圧性脳症 コウケツアツセイノウショウ 【英】hypertensive encephalopathy 【独】Hochdruckenzephalopathie 【仏】ence´phalopathie hypertensive
急激な血圧上昇ことに拡張期血圧の上昇とともに一過性の頭痛,悪心,嘔吐,意識障害,痙攣,黒内障などの脳症状を示すものをいう.眼底では乳頭浮腫,白斑,出血などを認めることがあり髄圧は上昇しタンパク増加を示すこともある.原因として悪性高血圧〔症〕malignant hypertensionが最も多かったが,これの激減とともにまれなものとなってきている.二次性高血圧*症では
急性糸球体腎炎,褐色細胞腫,クッシング症候群に伴うこともある.発現機序は血管攣縮,血管透過性亢進,脳循環自己調節の障害などが考えられており,病理学的には脳浮腫のほかに小出血,小壊死巣などを伴うこともある.治療は強力な降圧療法(しばしば非経口的に)を行う.有効な降圧が得られれば発作は一過性だが長期的予後は基礎疾患による.鑑別すべき疾患には尿毒症,脳出血,クモ膜下出血,脳梗塞,一過性脳虚血性発作,脳腫瘍,髄膜炎などがある. |