アクチノマイシン

アクチノマイシン

【英】actinomycinACT

【独】Aktinomyzin

【仏】actinomycine

【ラ】actinomycinum

同義語:ダクチノマイシンdactinomycin,アクチノマイシンD actinomycin DACTD

 

WaksmanおよびWoodruffら(1941)によりStreptomyces antibiocusの培養により放線菌由来としては最初に分離された抗生物質*antibiotics

抗生物質

コウセイブッシツ

【英】antibiotics

【独】Antibiotica

【仏】antibiotique

 

微生物によって生産され,微生物の発育を阻止する物質を抗生物質と称することを,1942年にWaksmanが提唱した.しかし高等植物のつくる抗菌作用antibiotic actionを示す物質も抗生物質の中に含まれることがある.また微生物の生産する制癌作用や抗ウイルス作用を示す物質を制癌抗生物質,抗ウイルス抗生物質と呼んでいる.抗生物質が有する抗菌作用以外の薬理作用や酵素阻害作用を示す微生物生産物まで抗生物質に入れる人もいる.現在では微生物によって生産され,微生物その他の細胞の発育を阻害する物質を抗生物質と呼んでいる.→抗ウイルス薬,抗癌性抗生物質

抗癌性抗生物質

コウガンセイコウセイブッシツ

【英】antitumor antibiotics

【独】antineoplastische Antibiotika

 

抗生物質のうち癌細胞に対して比較的選択的に作用しその発育・増殖を抑制するものを抗癌性抗生物質と呼ぶ.1949年梅沢がわが国の土壌放線菌から分離したアクチノマイシン*actinomycinが吉田肉腫細胞を破壊することが観察され,1952HeckmannによってStreptomyces chrysomallusから分離されたactinomycin Cに抗癌作用が証明されて以来,抗癌性抗生物質の研究が盛んとなり多くの薬剤が開発された.現在まで,1) アクチノマイシン類(actinomycin D),2) マイトマイシン類(mitomycin C),3) オーレオリック酸類(chromomycin A3),4) アントラサイクリン類(daunorubicin, doxorubicin, aclarubicin, neothramycin),5) ブレオマイシン類(bleomycin, peplomycin)および 6) 高分子抗生物質(neocarzinostatin)などが開発され広く臨床に用いられている.本剤はすべてDNA依存性のDNAあるいは(および)RNA阻害物質として作用し,癌細胞の発育・増殖を阻害する.マイトマイシン*C mitomycin C1956年泰らにより発見され,抗癌スペクトルが広く抗癌作用も強力で広く使用されているが,副作用として骨髄抑制が著明である.ドキソルビシン*doxorubicin1967Acramoneらにより発見され,抗癌スペクトルが広く作用も強力で速効性であるが,副作用として骨髄抑制のほか蓄積性による心毒性が著明である.1976年竹内らはdoxorubicinより心毒性の低いneothramycinを発見し臨床に用いている.ブレオマイシン*bleomycinBLM)は1966年梅沢らにより発見され,扁平上皮癌*に選択的に卓効を示す.副作用として肺毒性があるが骨髄抑制は少ない.ペプロマイシン*peplomycinBLMの誘導体で肺毒性が軽減しかつ強い抗癌作用を示す.

である.Strep tomyces属の多くの菌によりアクチノマイシン様の数種の型の抗生物質が確認され,それぞれABCDIJXと命名された.これらの相違は構造中のポリペプチド部分のアミノ酸の数と配列の差による.このうちでアクチノマイシンDは抗腫瘍薬として用いられているが,このほかに主としてグラム陽性菌に対する抗菌活性を有している.細菌,真菌および動物(腫瘍)細胞において二本鎖DNAに結合し,RNA合成を選択的に阻害することにより薬効を発揮する.悪性腫瘍の中でも,ウィルムス腫瘍*,

ウィルムス腫瘍

ウィルムスシュヨウ

【英】Wilms tumor

【独】WilmsTumor

【仏】tumeur de Wilms

同義語:腎芽細胞腫nephroblastoma,胎児性腺肉腫embryonal adenosarcoma

 

小児の腹部悪性腫瘍としては神経芽細胞腫*に次いで多い.腎の胎児性癌*であり,まれに両側性に発症することがある.半身肥大など奇形を合併することもまれでない.本腫瘍は小児癌の中でもとくに早期発見が大切であり,転移のないウィルムス腫瘍の5年生存率は80%に達している.本症は03歳までの発症が多く,乳幼児検診で発見されることが多い.腎盂造影では腎盂の実質的破壊像がみられる.顕微鏡的血尿をみることもある.進行例では肺への円形浸潤が特徴的である.治療は病期や年齢によって異なるが,外科的に腫瘍を摘出し放射線療法と化学療法を行う.抗腫瘍薬としてはアクチノマイシンD,アドリアマイシン,ビンクリスチンなどが用いられる.両側性の場合は腎移植が試みられている(Marx Wilmsはドイツの外科医,18671918).

絨毛上皮腫(絨毛癌*),

絨毛癌

ジュウモウガン

【英】choriocarcinoma

【独】Choriokarzinom

【仏】choriocarciome

【ラ】choriocarcinoma

同義語:絨毛上皮腫chorioepithelioma

 

絨毛細胞からなる悪性腫瘍で組織学的に合胞細胞およびLanghans細胞と認識される腫瘍細胞の増殖性破壊性病巣からなり,絨毛形態を認めないものをいう.確定診断は摘出物の組織学的検査による.妊娠に関連した妊娠性絨毛癌がほとんどであるが,妊娠に関連しない非妊娠性絨毛癌もあり,卵巣,精巣などより発生する胚細胞腫瘍の一型であるものと,ほかの癌が絨毛癌様に移行したものとがある.妊娠性絨毛癌の約半数は胞状奇胎*後に,残りの半数は正常分娩,流産,人工妊娠中絶後に発症する.したがって診断はこれらの後の不正性器出血*に注意し,骨盤血管撮影,胸部X線,脳CT, hCGの測定などの検査所見を総合して行う(絨毛癌診断スコア).治療は子宮摘出を原則とし,アクチノマイシンD,メトトレキサートの併用化学療法を用い,血清中hCGが検出されなくなるまで続行する.肺転移,脳転移に対しても時期を選んで手術を行うと有効であり,絨毛癌の治療は各種の治療法を適切に組み合わせた集学的治療法が最も優れている.

→表

破壊性胞状奇胎(侵入胞状奇胎*)

胞状奇胎

ホウジョウキタイ

【英】hydatidiformmole

【独】Blasenmole

【仏】mo^le hydatiforme

【ラ】mola hydatidosa

 

絨毛性疾患*の一つであり,絨毛の上皮が異常増殖して胞状に腫大する.その間質は血管に乏しく,浮腫と退行変性のため透明な液を入れた大小の嚢胞となり,これらの嚢胞が連なっているためにブドウの房のような外観を呈する.肉眼的にすべての絨毛が嚢胞化している全胞状奇胎totalcompletehydatidと,一部の絨毛が嚢胞化し,あるいは胎芽,胎児,臍帯を認める部分胞状奇胎partial hydatidiformmoleとがある.雄性発生説が有力である.頻度は350分娩に1胞状奇胎の発生がある.〔症状〕 1)子宮は妊娠週数に比して過大なことが多い. 2)妊娠早期より不正出血をみる. 3)重症悪阻および妊娠中毒症様症状. 4)ルテイン嚢胞lutein cystの存在(2030%).〔診断〕 以上の臨床症状と超音波診断法により嚢胞状のエコーを認め,尿中絨毛性ゴナドトロピン(hCG)が1,000 IU/mLであれば診断できる.〔治療〕 診断がつけば,直ちに子宮内容除去術を行うが,本症の約810%が侵入胞状奇胎*

侵入胞状奇胎

シンニュウホウジョウキタイ

【英】invasive hydatidiformmole

【独】destruierende Blasenmole

【仏】mo^le destructive

【ラ】mola hydatidosa destruens

同義語:破壊性胞状奇胎destructive hydatidiformmole

 

本症は奇胎絨毛が子宮筋層内に侵入したものであり,これが血行性に肺,腟壁などに転移を起こす.子宮筋層内に侵入した奇胎はさらに子宮を穿孔し腹腔内や傍結合組織に侵入することもある.胞状奇胎娩出後も不正性器出血*が続き,妊娠反応が35日後も陰性化しない症例,基礎体温(BBT)での高温層が持続する症例では本症を疑う.診断は骨盤血管撮影法で腫瘍の位置,大きさなどがわかる.超音波診断法も用いられる.胸部X線撮影も必須の検査法である.臨床的に本症と絨毛癌とを鑑別診断するために絨毛癌診断スコアを用いると,90%以上の正診率で鑑別が可能である.確定診断は摘出標本により組織学的に行う.本症はメトトレキサート,アクチノマイシンDなどの化学療法が奏効し治癒するので,妊孕性温存を希望する症例には,化学療法のみで治療するprimary chemotherapyを行う.子宮摘出と化学療法の併用も行われる.予後は良好であるが十分の化学療法を行い,再発の防止に努める.→絨毛性疾患

に,12%が絨毛癌*になるので娩出後の管理が重要である.

に有効であり,単独あるいは放射線療法,外科的療法との併用によりすぐれた効果を示す.副作用・毒性としては骨髄障害,胃腸障害,皮膚毒性があげられる.〔承認投与量の上限〕 アクチノマイシンD:(静注)1日 0.01mg/kg

アクチノマイシンの概要

アクチノマイシン(Actinomycin)はストレプトマイセス属の放線菌から産生されるポリペプチド系抗生物質で、1940年に最初の抗がん作動性物質としてSelman Waksmanらにより報告されました。

化学構造と主な物性

これらのデータは主にActinomycin Dとしての代表的な物性値を示しています。

作用機序

臨床応用

小児固形腫瘍における標準化学療法の一翼を担っています。

投与方法と用量

投与間隔や休薬期間は骨髄抑制の回復状況により調整が必要です。

主な副作用と注意点

さらなる展望

近年ではアクチノマイシンの作用機序解明を契機に、DNAインターカレーターやトポイソメラーゼ阻害薬の設計指針が進展しています。将来的には副作用プロファイルを改善した類縁体や、ナノ粒子を用いた標的デリバリー系の開発が期待されます。