悪性神経鞘腫

アクセイシンケイショウシュ

【英】malignant neurilemoma, malignant neurinoma

 

悪性シュワン腫malignant schwannomaとも呼ばれるシュワン細胞由来の紡錘形細胞肉腫で,末梢神経あるいは神経線維腫*

神経線維腫

シンケイセンイシュ

【英】neurofibroma

 

神経鞘腫*neurilemoma

神経鞘腫

シンケイショウシュ

【英】neurilemoma, neurinoma

【独】Neurilemom, Neurinom

【仏】neurinome

 

シュワン腫schwannomaとも呼ばれ,線維性被膜に囲まれた良性の病変で,組織学的には紡錘形細胞と線維が豊富で核の柵状配列palisadingの目立つ成分(Antoni A型)と,細胞および線維に乏しい疎な部分(Antoni B型)とからなる.臨床的にはあらゆる年齢層に生じるが,2050歳に多い.頭頚部,四肢の伸側に好発する.後縦隔や後腹膜に発生することもある.通常は単発性であるがまれには多発し,フォンレックリングハウゼン病von Recklinghausen disease(神経線維腫*)

経線維腫

シンケイセンイシュ

【英】neurofibroma

 

神経鞘腫*neurilemoma, シュワン腫schwannomaとならんで末梢神経から発生する代表的な良性腫瘍である.以前は線維神経腫fibroneuromaともいわれた.好発年齢は2040歳で身体各所の真皮および皮下組織に無痛性の硬い腫瘤として認められる.組織学的には細長いSchwann細胞と線維芽細胞*とからなり,膠原線維を混じえて相互にからみ合いながら波状に配列し増生する.神経鞘腫と違って被膜は有さず,また二次的な石灰化,出血,嚢胞状の変性巣を伴うこともまれである.孤立性のものと全身の皮膚に多発する神経線維腫症*neurofibromatosisとに分けられるが,前者が90%を占め,後者はvon Recklinghausen病(多発性神経線維腫症*)に相当するものである.個々の腫瘍結節の組織像からこの両者を区別することはできない.なお,特殊な神経線維腫のタイプとして蔓状型,Pacini型,類上皮型,色素型がある.

に合併する場合もある.肉眼的には腫瘍は,神経鞘内に発生するため,神経外膜からなる被膜で囲まれている.大きな神経内に生じた場合は神経内に偏在性に存在する.腫瘍は通常は直径5cmくらいの大きさであるが,後腹膜や縦隔に生じた場合は相当に大きな腫瘤を形成する.大きな病変では嚢胞形成や石灰化などの二次的な変性が起こっていることが多い.組織学的には前述のようにAntoni A型とB型の像を有することが特徴であるが,A型のみからなる場合もある.前述のような核の柵状配列のほかに,細胞と線維のうずまき状の配列が特徴である.Antoni B型のところでは,嚢胞変性や不整の大きな血管や炎症細胞浸潤がみられ,時には腫瘍全体が血管腫のようにみえることがある.軽度の核異型や少数の核分裂像を伴う場合もある.電顕的には神経線維腫とは異なり,神経鞘腫はシュワン細胞のみからなる.腫瘍細胞には細長い突起が目立ち,細胞は基底膜で囲まれている.腫瘍細胞間にはしばしばlongspacing collagenがみられる.免疫組織化学的にはS100タンパク*陽性である.

 シュワン腫schwannomaとならんで末梢神経から発生する代表的な良性腫瘍である.以前は線維神経腫fibroneuromaともいわれた.好発年齢は2040歳で身体各所の真皮および皮下組織に無痛性の硬い腫瘤として認められる.組織学的には細長いSchwann細胞と線維芽細胞*とからなり,膠原線維を混じえて相互にからみ合いながら波状に配列し増生する.神経鞘腫と違って被膜は有さず,また二次的な石灰化,出血,嚢胞状の変性巣を伴うこともまれである.孤立性のものと全身の皮膚に多発する神経線維腫症*neurofibromatosisとに分けられるが,前者が90%を占め,後者はvon Recklinghausen病(多発性神経線維腫症*)に相当するものである.個々の腫瘍結節の組織像からこの両者を区別することはできない.なお,特殊な神経線維腫のタイプとして蔓状型,Pacini型,類上皮型,色素型がある.

から発生する.成人に発生する腫瘍で上下肢の近位および体幹に好発し,神経鞘腫*が頭頚部に好発するのとは異なっている.フォンレックリングハウゼンの神経線維腫症に合併する症例は悪性シュワン腫の半分以下とされている.肉眼的には末梢神経と密接な関係にあるのが特徴であり,フォンレックリングハウゼン病von Recklinghausen's diseaseでは神経線維腫内に発生する.組織学的には線維肉腫に類似した紡錘形細胞肉腫の像を示すが,核の形がより不整で,波状,帯留様あるいはコンマ状を呈することがある.細胞と線維がうずまき状に並んだり,核の柵状配列や細胞成分に乏しい粘液腫様の像を示すことがある.また成熟した骨や軟骨,まれには重層扁平上皮などの異所性組織が認められるのが特徴である.しかし悪性シュワン腫の診断根拠としては,末梢神経あるいは神経線維腫から発生した肉腫ということ以外に一般的に受け入れられた基準はない.電子顕微鏡的には細長い細胞突起とmicrotubulesおよびneurofilamentsの存在,細胞突起間の接着装置,基底膜,細胞間のlongspacing collagenの存在などが特徴とされている.免疫組織化学的にS100タンパクが陽性となる症例もある.悪性シュワン腫の特殊型として,横紋筋への分化を伴った悪性Triton腫瘍,腺管形成を伴う悪性シュワン腫,腫瘍細胞が上皮様を呈する悪性上皮様シュワン腫などがある.