悪性細網症
アクセイサイモウショウ
【英】malignant reticulosis
悪性細網症
アクセイサイモウショウ
【英】malignant reticulosis
→悪性肉芽腫症
悪性肉芽腫症
アクセイニクゲシュショウ
【英】malignant granulomatosis
【独】maligne Granulomatose
従来,臨床的に広義の進行性壊疽性鼻炎(進行性鼻壊疽*)
進行性鼻壊疽
シンコウセイビエソ
【英】nasal malignant granuloma
【独】Granuloma gangraenescens der Nase
【仏】rhinite gangre´neuse progressive
同義語:壊疽性鼻炎lethal midline granuloma,進行性壊疽性鼻炎progressives
malignes Granulom,悪性正中肉芽腫granulome malin me´diofacial, granulome malin de Stewart
鼻腔またはその周辺に壊疽性,肉芽腫性病変を生じ,高熱を伴って次第に顔面,口蓋,咽頭に進展する疾患のうち,悪性リンパ腫とウェゲナー肉芽腫症*を除いたもの.病理組織学的にはリンパ球,組織球浸潤を伴った壊死像が主体で,これらの浸潤細胞が腫瘍性性格をもつものか,反応性の増殖にすぎないのか明らかにされていない.本症の本態を悪性組織球症malignant histiocytosis,あるいはT細胞性リンパ腫*とする意見もある.20~40歳代に発症するまれな疾患で,男性にやや多い.鼻閉,悪臭を伴った血性鼻漏,鼻出血,38~40℃の弛張熱などで発症し,下鼻甲介,鼻中隔に壊死を生じ,骨露出をみるにいたる.壊死はさらに硬口蓋,顔面皮膚に及ぶ.非連続的に咽頭,喉頭に壊死性病変をみることも少なくない.リンパ節の腫脹を認めないのが特徴とされる.検査所見では赤沈の亢進が認められることもあるが,その他の変化は著明でない.症状の進行が速く,その一方で病理診断の確定が困難なことが多いので,現時点では悪性リンパ腫に準じた照射,化学療法の併用療法をできるだけ早く開始すべきと考えられる.
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とされている疾患の中には,ウェゲナー肉芽腫症*,
ウェゲナー肉芽腫症
ウェゲナーニクゲシュショウ
【英】Wegener granulomatosis
【独】Wegener‐Granulomatose
【仏】granulomatose de Wegener
病理学的に,1 上気道あるいは下気道の壊死性肉芽腫性病変,2 肺を主とする全身諸臓器の小動静脈の壊死性血管炎,3 糸球体腎炎,を三大徴候として,尿毒症か呼吸不全による死亡をみる疾患であるが,腎病変を欠き,肺に限局する不全型もある.症状は難治性の鼻炎,副鼻腔炎*に続いてせき,血痰,胸痛さらに発熱,体重減少,腎不全徴候を呈してくる.肺には種々の大きさの壊死性肉芽腫性病変が多発し,胸部X線写真上では肺結核や転移性肺腫瘍とまぎらわしい結核性陰影が出現し,1/2~1/3の例では空洞化して薄壁の円形陰影をみる.肺炎様陰影,血性胸水などもみられる.皮疹,関節痛,頭蓋骨・副鼻腔の骨破壊,眼球炎などを呈する場合もある.病因は不明であるが,自己免疫的機序に基づく結合組織病*と目されており,III型アレルギー因子とIV型アレルギーの因子が考えられている.数ヵ月から1~2年で死亡する例の多い予後不良の疾患であるが,副腎皮質ホルモン*(ステロイド),シクロホスファミド*,アザチオプリン*などによる早期治療で生存期間が延長されてきている(Friedrich Wegenerはドイツの病理学者,1907生).
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鼻原発の悪性リンパ腫および狭義の進行性壊疽性鼻炎が包括されていた.このうちの狭義の進行性壊疽性鼻炎は悪性肉芽腫症と呼ばれ,これはまた致死性正中部肉芽腫lethal midline granulomaや壊疽性肉芽腫gangrenous
granulomaとも呼ばれている.臨床像は,鼻粘膜部における非特異的炎症の前駆症状を経て始まる.初発症状は鼻出血のことが多く,鼻粘膜部は急速に壊死性炎症により潰瘍を形成し,軟骨,骨を破壊し,軟口蓋穿孔をきたす.ときに頚部リンパ節へ波及する.組織学的には,少なくとも2つの病型が存在する.その1つは広範な壊死性肉芽腫性炎で好中球,リンパ球,形質細胞浸潤とともに軽度に異型性のない組織球系細胞の浸潤を示し,多核巨細胞を伴わない病変で,Tsokosら(1982)がidiopathic
midline destructive disease(IMDD)として分類した病変である.他の1つは前記壊死性肉芽腫性炎に異型性のある組織球系細胞の増殖を示し,血管壁侵襲をきたす病変で肺,腎,皮膚などへも波及する一種の悪性細網症malignant reticulosisと考えられている.〔治療〕 一般に悪性リンパ腫*
悪性リンパ腫
アクセイリンパシュ
【英】malignant lymphoma
【独】malignes Lymphom
【仏】lymphome malin
【ラ】lymphoma malignum
臨床的にはリンパ組織が腫瘤状に腫大し,病変は進行性で,致死的経過をたどり,病理学的には正常リンパ組織の構成細胞に由来する悪性腫瘍を総括した病名である.その大部分はリンパ節に原発する(節性リンパ腫nodal lymphoma).しかし,ときに縦隔,消化管などのリンパ節以外の組織からも発生し(節外性リンパ腫extranodal lymphoma),皮膚にも起こる(皮膚リンパ腫*).かつてはリンパ肉腫*,細網肉腫*,ホジキン病*に大別された.しかし,今日ではホジキン病(ホジキンリンパ腫)に対し,それ以外のものを非ホジキンリンパ腫*と呼び,2つの大きなグループに区別されている.非ホジキンリンパ腫は病理組織学的に増殖様式から濾胞性リンパ腫*とびまん性リンパ腫*とに大別され,両者はさらにいくつかの細胞型に細分されている.他方リンパ球の発生,分化過程や機能的,免疫学的性状に基づいてB細胞性リンパ腫*とT細胞性リンパ腫*とに区別される.このほか組織球由来のリンパ腫も存在する(組織球肉腫*).
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の治療が行われるが,発病早期には少量のX線照射が効果がある.
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「悪性細網症」とは、組織内に存在するマクロファージや樹状細胞などのヒスチオサイト系細胞が、異常な形質を呈して悪性化する希少で進行の速い疾患群を指します。一般的には、急速な全身性症状を呈し、発熱、体重減少、全身性の倦怠感、さらには肝脾腫や骨髄でのパンクシトープニア(多系統の血球減少)などが見られることが多いです。病理組織学的な検査や免疫表現型解析によって、これらの細胞が腫瘍性の性質を持つことが確認され、他のリンパ系腫瘍(たとえば、アナプラスティック大細胞リンパ腫)との鑑別が行われます[]。
歴史的には、いくつかの亜型に分かれるケースも報告されており、細胞の形態(未熟型、中間型、成熟型)や、細胞間での機能的な違い、さらにはサイトカインの過剰産生に伴う全身性の炎症反応(「サイトカインクライシス」とも言われる)を示す症例が記録されています。これらは、疾患の進行の速さや治療反応性と密接に関連しており、診断および治療上の重要な指標となります][].
治療面では、悪性細網症は非常に難治性であり、化学療法・放射線療法、さらには免疫調節療法などが試みられるものの、全体的な予後は厳しいとされています。近年の分子診断技術や新規の分子標的治療の進展により、従来の診断名が再評価され、疾患概念自体が再編成されつつあります。たとえば、以前は「悪性細網症」として分類された症例の多くが、現在ではヒスチオサイト系や樹状細胞系の未分化腫瘍として再分類されているという見解も存在します][].
悪性細網症は、その希少性から十分な症例数に基づくエビデンスが限られているため、診断・治療のプロトコルが確立されにくい状況にあります。医療従事者には、疑いのある症例に対しては迅速な病理学的評価および複数科間での連携による診断確認が強く求められています。また、最新の研究成果や国際的なガイドラインがどのように適用されるかについても、逐次情報収集することが重要です。
さらに、近年の研究では、腫瘍微小環境におけるサイトカインの役割や、免疫関連分子の異常が、疾患の進行や重症度と関連していることが示唆されています。このような知見は、将来的な治療戦略の新たなターゲットとなる可能性があり、今後の臨床研究や基礎研究への期待が高まっています][].
悪性細網症(または悪性組織球症)に関連する主な症状は、急速に進行する全身性の炎症反応と免疫異常です。以下のような症状が報告されています:
- 高熱:持続的で原因不明の発熱が多くの症例で見られます。
- 体重減少と全身倦怠感:消耗性疾患としての特徴です。
- 肝脾腫(肝臓・脾臓の腫大):腹部膨満感や圧迫感を伴うことがあります。
- 汎血球減少(パンサイトペニア):赤血球・白血球・血小板すべてが減少し、貧血、感染症、出血傾向を引き起こします。
- 骨髄での血球貪食像:異常な組織球が他の血球を貪食する現象が観察されます。
- サイトカインストーム様の症状:過剰な免疫反応により、ショックや多臓器不全に至ることもあります。
また、感音性難聴や免疫不全による易感染性が合併することもあり、特に小児例では生後早期に重篤な感染症を発症するケースも報告されています。
この疾患は非常にまれで、症状が他の疾患と重なるため、早期診断と専門的な病理評価が極めて重要です。さらに詳しく知りたい症状や、鑑別すべき疾患についてもお話ししましょうか?
悪性細網症(Malignant
Histiocytosis)の鑑別診断は非常に重要で、特に他のリンパ系・造血系疾患や免疫異常症との区別が求められます。以下に主な鑑別疾患を挙げます:
主な鑑別診断
- アナプラスティック大細胞リンパ腫(ALCL)
- 大型異型細胞が出現し、CD30陽性を示すことが多く、悪性細網症と形態的に類似します。
- 血球貪食性リンパ組織球症(HLH)
- 高熱、肝脾腫、汎血球減少、血球貪食像などが共通しますが、HLHは反応性疾患であり、腫瘍性ではない点が異なります。
- 急性白血病(特に単球性白血病)
- 骨髄での異常細胞増殖や血球減少が見られ、免疫表現型や染色体異常の解析が鑑別に有用です。
- 細網異形成症(Reticular
Dysgenesis)
- 原発性免疫不全症の一つで、好中球・T細胞の著減、感音性難聴を伴うことがあり、悪性細網症と症状が重なることがあります。
- ウイルス関連血球貪食症候群(VAHS)
- EBウイルスなどの感染に伴う反応性の血球貪食症候群で、悪性ではないが臨床像が酷似します。
- 播種性血管内凝固症候群(DIC)を伴う敗血症
- 急性発症の全身症状や血球減少が共通しますが、感染症の証拠や培養結果が鑑別の鍵となります。
これらの疾患は、病理組織学的評価、免疫染色、遺伝子解析、臨床経過の観察を通じて慎重に鑑別されます。特に悪性細網症は腫瘍性疾患であるため、腫瘍性細胞の証明が診断の決め手となります。
さらに深掘りしたい疾患や、鑑別のための検査についてもお話しできますよ。
血球貪食性リンパ組織球症(Hemophagocytic Lymphohistiocytosis:HLH)は、免疫系の暴走によって引き起こされる重篤な炎症性疾患です。特にマクロファージやT細胞が過剰に活性化し、正常な血球を貪食(飲み込んで破壊)することで、全身性の臓器障害を引き起こします。
🔍 分類
HLHは大きく2つに分類されます:
- 一次性(遺伝性)HLH
- 生まれつき免疫調節に関わる遺伝子(例:PRF1,
UNC13D, STX11など)に異常がある。
- 乳児期に発症することが多く、家族歴がある場合も。
- 二次性(後天性)HLH
- ウイルス感染(特にEBウイルス)、悪性腫瘍(特にリンパ腫)、自己免疫疾患(例:SLE)などが引き金。
- 小児から成人まで幅広い年齢層で発症。
🧬 主な症状
- 高熱(持続性)
- 肝脾腫(肝臓・脾臓の腫大)
- 汎血球減少(赤血球・白血球・血小板の減少)
- 高フェリチン血症(炎症マーカーの異常上昇)
- 高トリグリセリド血症、低フィブリノーゲン血症
- 中枢神経症状(けいれん、意識障害など)
- 骨髄での血球貪食像
🧪 診断基準(HLH-2004)
以下の8項目のうち5つ以上を満たすと診断されます:
- 発熱
- 脾腫
- 2系統以上の血球減少
- 高トリグリセリド血症または低フィブリノーゲン血症
- 骨髄・脾臓・リンパ節での血球貪食像
- NK細胞活性の低下
- フェリチン高値(≧500 ng/mL)
- 可溶性IL-2受容体(sIL-2R)高値
💊 治療
- 免疫抑制療法(ステロイド、エトポシド、シクロスポリンAなど)
- 造血幹細胞移植(一次性HLHでは根治的治療)
- 感染症や悪性腫瘍の治療(二次性HLHでは原因疾患の制御が重要)
この疾患は早期診断と迅速な治療介入が生死を分けることが多く、特に小児例では注意が必要です。さらに詳しく、EBウイルス関連HLHや自己免疫疾患に伴うHLHについても掘り下げてみましょうか?
血球貪食性リンパ組織球症(HLH)の治療は、免疫の過剰反応を抑えることと、原因疾患の制御が中心です。以下に、一次性(遺伝性)と二次性(後天性)それぞれの治療戦略を詳しくご紹介します。
🔹 一次性HLH(遺伝性)の治療
- 初期治療(HLH-94/HLH-2004プロトコル)
- デキサメタゾン(ステロイド)
- エトポシド(VP-16)
- シクロスポリンA(免疫抑制剤)
- 中枢神経症状がある場合は髄腔内メトトレキサートを併用
- 根治療法
- 遺伝子異常による免疫制御不全を根本的に治す唯一の方法
- 初期治療で寛解を得た後、早期に移植を行うことが推奨されます。
🔹 二次性HLH(感染・悪性腫瘍・自己免疫疾患に続発)
- 原因疾患の治療
- 例:EBウイルス感染 → 抗ウイルス療法やリツキシマブ(CD20抗体)
- 悪性腫瘍 → 化学療法
- 自己免疫疾患 → ステロイドや免疫抑制剤
- 免疫抑制療法
- 一次性と同様のHLH-2004プロトコルを適用することもあります。
- **アナキンラ(IL-1受容体拮抗薬)やルキソリチニブ(JAK阻害薬)**などの分子標的薬も、重症例や再発例で使用されることがあります。
- 支持療法
- 血小板や赤血球の輸血
- 感染予防のための抗菌薬
- DIC(播種性血管内凝固)への対応
🧬 今後の展望
- **エマパルマブ(IFN-γ阻害抗体)**など、サイトカインストームを直接抑える新薬が登場しつつあり、難治例への希望となっています。
- 遺伝子治療の研究も進行中で、特に一次性HLHに対する根治的アプローチとして注目されています。
HLHは進行が非常に速いため、疑われた時点で治療を開始することが生存率を大きく左右します。治療の選択は、年齢、原因、臓器障害の有無などを総合的に判断して行われます。
必要であれば、EBウイルス関連HLHや移植の具体的な流れについても詳しくご説明できますよ。