悪性間葉腫

アクセイカンヨウシュ

【英】malignant mesenchymoma

 

Stout1948年に提唱した名称で,2種以上の間葉組織成分からなる肉腫である.骨または軟骨肉腫*

軟骨肉腫

ナンコツニクシュ

【英】chondrosarcoma

【独】Chondrosarkom

【仏】chondrosarcome

 

腫瘍細胞*

腫瘍細胞

シュヨウサイボウ

【英】tumor cell

【独】Tumorzelle, Geschwulstzelle

【仏】cellules tumorales

 

腫瘍を構成する細胞を腫瘍細胞というが,この際,腫瘍の部分である腫瘍間質を構成する細胞は含めない.すなわち腫瘍実質を構成する細胞である.腫瘍細胞は程度の差こそあれ異型*atypiaを示す.良性腫瘍細胞では異型性が少なく,正常細胞との差を見出すのに難しい場合もある.悪性腫瘍細胞,すなわち癌細胞*

癌細胞

ガンサイボウ

【英】cancer cell

【独】Krebszelle

【仏】cellule cance´reuse

同義語:悪性腫瘍細胞malignant tumor cell

 

癌細胞―ここでは肉腫を含めた悪性腫瘍細胞を意味するが―は宿主の正常細胞が遺伝子レベルにおいて何らかの不可逆的変化を生じた結果,異常の細胞へと変換し,無限の増殖性を有し不死の状態に陥り,宿主を死に至らしめる.癌細胞群が示すこの異常増殖態度は宿主から自律性を獲得した結果である.癌細胞群は同時に増殖に必要な酸素,栄養,構築成分を宿主側から供給を受ける.すなわち血管や間葉系細胞で構成される固有間質である.これは,癌細胞自身がこれらの細胞を誘導する因子を放出しているものと推定されている(例えばtumor angiogenesis factor).癌細胞は種々の増殖因子growth factorを産生し,同時に増殖因子の受容体receptorをもっている.この両者が互いに作用して自律性の増殖を行う原因とみなす説もある(autocrine theory).形態学的には,癌細胞は多かれ少なかれ異型*atypiaを示す.これは生化学的には偏倚があるという.偏倚は通常少なくないが,ときに最小偏倚を示す(minimal deviation hepatoma).人体の癌では,例えば甲状腺の癌細胞は異型が最小であり,良性細胞との区別がつきにくい.癌細胞はまた,同時に未熟性を示し,胎生期の形質を発現する場合がある(例えばα‐fetoprotein).未熟化することを脱分化dedifferentiation(→前〔進〕形成)と表現する場合がある.また,正常にない形質を発現することを異分化disdifferentiationという.例えば胃癌が絨毛上皮腫に変化する場合である.これらのことを腫瘍病理学では従来,退形成*anaplasiaおよび降形成*kataplasiaと表現していた.日常の診断では,癌細胞はその形態が示す異型性によって判定され,細胞レベルでの判断力の向上は近年めざましいものがある(例えば臨床細胞診).

や肉腫細胞では異型性が強く,この異型性を利用して臨床的に細胞診*clinical cytologyが行われている.腫瘍細胞は遺伝子のレベルで変化をきたしその変化は不可逆なものと考えられている.

が軟骨を形成するが直接骨を形成することのない悪性腫瘍である.軟骨腫とは細胞密度が高いこと,肥大細胞や二核細胞の存在によって鑑別される.原発性骨悪性腫瘍中,骨肉腫に次いで発生数が多い.典型例のほかに軟骨肉腫の像と血管外皮腫*の像を有する間葉性軟骨肉腫,軟骨肉腫と線維肉腫*の像を有する脱分化型軟骨肉腫などの特殊型がある.男女比はやや男性に多く,発生年齢は20歳代より60歳代までほぼ均等に分布している.〔症状〕 疼痛で,時に腫脹を伴う.X線像は骨破壊像が主体で,髄内性の境界不明瞭な骨破壊像を示す.骨皮質は菲薄化し,消失することもある.骨破壊像内に斑点状,わた毛状の石灰沈着をみることがある.骨膜反応はまれである.血管造影像では豊血管性を示す例は少ない.病理組織像では分化型と未分化型に分類される.未分化型では異型軟骨細胞,二核細胞,巨細胞,核分裂像などが認められる.分化型では軟骨腫chondromaとの鑑別が必要となる.軟骨肉腫では細胞密度が高いこと,肥大細胞,二核細胞の存在,さらには臨床所見が軟骨腫との鑑別点となる.〔治療〕 腫瘍の外科的完全除去による.腫瘍が比較的骨内に限局し,分化型であれば広範切除術が適応となる.腫瘍が大であったり,未分化型の場合は切・離断術が適応となる.手術不可能例には放射線治療が行われるが,一般に本腫瘍は放射線および薬剤抵抗性である.〔予後〕 骨肉腫*より良好である.

に他の肉腫*

肉腫

ニクシュ

【英】sarcoma

【独】Sarkom

【仏】sarcome

【ラ】sarcoma

 

肉腫は,ギリシャ語のsarkos(肉)という語からでた名称であり,肉眼的にこの腫瘍が,肉のような外観を呈することから称された.しかし, Virchowによって,今日の肉腫の概念が定められ,非上皮性組織に起源をもつ悪性腫瘍の総称となった.したがって,悪性腫瘍は上皮性組織から発生する癌腫とこの肉腫に二分されることになる.肉腫には線維肉腫*,粘液肉腫,脂肪肉腫*,軟骨肉腫*,骨肉腫*,平滑筋肉腫*,横紋筋肉腫*,血管肉腫*,リンパ管肉腫などが含まれる.そのほかに神経鞘細胞由来の悪性腫瘍も含ませることがある.肉腫は,一般に速やかな発育を示し,その発育は浸潤性,組織破壊性である.癌腫に比べると若年者に発生するものも多くみられ,また,癌腫以上に悪性度の高いものがある.

が組み合わされたものと脂肪肉腫と筋原性肉腫が組み合わされたものに大別され,他の組み合わせはまれである.55歳以上の成人に多く,小児には少ないまれな腫瘍で,後腹膜や大腿部に好発する.予後は混在する肉腫の性格によってさまざまである.→間葉腫,

間葉腫

カンヨウシュ

【英】mesenchymoma

 

2種以上の異なった間葉性組織で構成された腫瘍の総称で,混合間葉腫と同義語である.最も普通にみられる混合腫瘍の一つで,良性の血管脂肪腫,粘液線維腫,血管・筋・脂肪腫,軟骨粘液線維腫やそれらの悪性型が含まれる.→混合間葉腫

混合間葉腫

混合間葉腫

コンゴウカンヨウシュ

【英】mixed mesenchymoma

【独】gemischtes Mesenchymom

同義語:間葉性混合腫瘍mesenchymal mixed tumor

 

2種以上の異なった間葉性組織で構成された腫瘍の総称である.良性の血管脂肪腫,粘液線維腫,血管・筋・脂肪腫,軟骨粘液線維腫やそれらの悪性型が含まれる.→間葉腫

 

「悪性間葉腫(あくせいかんようしゅ)」は、間葉系組織(筋肉、脂肪、血管、骨、軟骨など)から発生する悪性腫瘍(がん)の総称で、一般的には「肉腫(サルコーマ)」と呼ばれます。非常にまれな腫瘍で、全がんの1%未満とされています。


主な特徴


診断と治療


たとえば、GIST(消化管間質腫瘍)は悪性間葉腫の一種で、消化管の粘膜下にできる腫瘍です。日本では年間10万人に12人とされ、胃や小腸に多く発生します。


もし特定の種類や治療法について詳しく知りたい場合は、教えてくださいね。どこまでも掘り下げていきますよ。


悪性間葉腫(肉腫)の治療法は、腫瘍の種類・進行度・発生部位によって異なりますが、以下のような選択肢があります:


標準的な治療法




1.     外科的切除 最も基本的かつ有効な治療法です。腫瘍を完全に切除できれば、根治が期待できます。


2.     化学療法(抗がん剤) 転移や再発のリスクが高い場合や、手術が難しい場合に行われます。種類によっては効果が限定的なこともあります。


3.     放射線療法 局所制御や術後補助療法として用いられますが、肉腫の種類によっては効果が限定的です。


4.     分子標的治療 たとえばGIST(消化管間質腫瘍)では、イマチニブスニチニブなどの分子標的薬が非常に効果的です。


新しい治療法・研究中のアプローチ




·         間葉系幹細胞を用いた治療 幹細胞が腫瘍に集まる性質を利用し、抗がん剤やウイルスを腫瘍に届ける「ドラッグデリバリーシステム」が研究されています。


·         腫瘍融解ウイルス療法 腫瘍細胞を破壊するウイルスを使った治療で、免疫療法と組み合わせることで全身的な抗腫瘍効果も期待されています。


·         遺伝子パネル検査による個別化医療 がんの遺伝子異常を調べて、最適な治療薬を選ぶ「プレシジョン・メディシン」も進んでいます。


治療の選択は、腫瘍の性質や患者さんの全身状態、希望などを総合的に考慮して決定されます。もし特定の肉腫の種類(例:GIST、脂肪肉腫など)がわかっていれば、さらに詳しくご案内できますよ。気になることがあれば、遠慮なく聞いてくださいね。


はい、悪性間葉腫に対する新しい治療法の研究も進んでおり、いくつか注目すべきアプローチがあります:


🧬 1. 幹細胞を使ったドラッグデリバリーシステム(DDS




東京理科大学の研究では、間葉系幹細胞(MSCが腫瘍に集まる性質を利用し、抗がん剤を封入したナノ粒子を幹細胞の表面に装着して、がん組織にピンポイントで薬剤を届ける方法が開発されています。 この方法により、正常組織への副作用を抑えつつ、腫瘍への薬剤効果を高めることが期待されています。


🦠 2. 腫瘍融解ウイルス × 幹細胞による免疫療法




岡山大学とハーバード大学の共同研究では、腫瘍を破壊するウイルス(腫瘍融解ウイルス)と免疫治療薬を搭載した幹細胞を使い、脳転移を含む進行がんに対する新しい治療法が開発されました。 この治療は、がん細胞を直接破壊するだけでなく、全身の免疫反応を活性化させる効果もあり、将来的な臨床応用が期待されています。


これらはまだ臨床試験段階または前臨床段階のものもありますが、従来の治療法では難しかった進行がんや転移性腫瘍に対して、新たな希望となる可能性があります。


特定の肉腫の種類に応じた最新治療の情報もお調べできますので、気になるタイプがあれば教えてくださいね。もっと深掘りしていきましょう。


🧪 トラベクテジン(商品名:ヨンデリス)の臨床試験結果




·         対象:切除不能または再発性の悪性軟部腫瘍(特に染色体転座を伴うタイプ)


·         試験名JMOG043試験(日本人対象の後向き研究)


·         結果


o    有効性:無増悪生存期間(PFSの延長が確認され、特にL-sarcoma(脂肪肉腫・平滑筋肉腫)で効果が高いとされました。


o    安全性:副作用はあるものの、管理可能な範囲と評価されています。


·         この結果を受けて、日本では2015年にトラベクテジンが承認されました。


🧬 間葉系幹細胞を用いた治療の非臨床評価




·         臨床試験前の非臨床安全性評価では、腫瘍形成リスクや毒性の有無を確認するためのガイドラインが整備されています。


·         特に、中枢神経・呼吸器・心血管系への影響や、不純物の安全性などが評価項目となっています。


これらの結果は、悪性間葉腫に対する治療の選択肢を広げるうえで重要なステップです。もし特定の薬剤や治療法(例:エリブリン、パゾパニブなど)についての試験結果を知りたい場合は、さらに詳しくお調べできますよ。どこまで深掘りしましょうか?