アクチン

アクチン

【英】actin

【独】Aktin

【仏】actine

 

筋原線維*myofibril

筋原線維

キンゲンセンイ

【英】myofibril

【独】Myofibrille

【仏】myofibrille

【ラ】myofibrilla

 

骨格筋*

骨格筋

コッカクキン

【英】skeletal muscles

【独】Skelettmuskeln

【仏】muscle squelettique

【ラ】musculus skeleti

同義語:横紋筋striated muscle

 

筋組織は骨格筋,平滑筋,心筋の3種に分けられるが,骨格筋は能動運動器として身体の運動を司る.人体には約400の骨格筋があり,体重の約50%を占める.筋の主要成分は水(75%),タンパク質(20%)その他少量のグリコゲンなどを含む.付着部位により骨格筋,皮筋,関節筋を区別する.付着のうち収縮時に移動する方を停止insertio,固定している方を起始origoという.筋の起始・停止は強い結合〔組〕織*

骨格筋

コッカクキン

【英】skeletal muscles

【独】Skelettmuskeln

【仏】muscle squelettique

【ラ】musculus skeleti

同義語:横紋筋striated muscle

 

筋組織は骨格筋,平滑筋,心筋の3種に分けられるが,骨格筋は能動運動器として身体の運動を司る.人体には約400の骨格筋があり,体重の約50%を占める.筋の主要成分は水(75%),タンパク質(20%)その他少量のグリコゲンなどを含む.付着部位により骨格筋,皮筋,関節筋を区別する.付着のうち収縮時に移動する方を停止insertio,固定している方を起始origoという.筋の起始・停止は強い結合〔組〕織*

結合〔組〕織

ケツゴウソシキ

【英】connective tissue

【独】Bindegewebe

【仏】tissu conjonctif

 

結合〔組〕織は中胚葉由来の組織で種々の臓器の構造および代謝の維持を行う働きがある.基本的には通常の線維性結合〔組〕織 fibrous connective tissueにみられるように,線維芽細胞*とこの細胞の産生した細胞間物質(細胞間質*)よりなっている.細胞間物質としては膠原線維*,弾性線維*,細網線維 reticular fiberなどの線維と酸性粘液多糖類を主とする基質がある.骨や軟骨も基本的には線維性結合〔組〕織とおなじ構造であるが,細胞間物質の量がきわめて多い.脂肪細胞や白血球も結合〔組〕織の成分とされている.

からなる腱tendoまたは腱膜aponeurosisをなす.紡錘状筋において起始に近い部を筋頭caput,停止に近い部を筋尾cauda,中部を筋腹venterという.骨格筋線維(筋細胞)は紡錘形をした多核細胞で,数mmから15cmの長さを持ち,太さも20200 μmの大型細胞である.筋の血管はよく発達し筋線維をとりまいて豊富な毛細管網を作る.筋線維の収縮は脳・脊髄の運動細胞から起こる運動神経線維が個々の筋線維に達しその表面に運動終板を作って興奮を伝える.

からなる腱tendoまたは腱膜aponeurosisをなす.紡錘状筋において起始に近い部を筋頭caput,停止に近い部を筋尾cauda,中部を筋腹venterという.骨格筋線維(筋細胞)は紡錘形をした多核細胞で,数mmから15cmの長さを持ち,太さも20200 μmの大型細胞である.筋の血管はよく発達し筋線維をとりまいて豊富な毛細管網を作る.筋線維の収縮は脳・脊髄の運動細胞から起こる運動神経線維が個々の筋線維に達しその表面に運動終板を作って興奮を伝える.

や心筋の筋細胞(筋線維)を縦走する約1μm径の細線維で,いくつかの群をなして走行するため,筋細胞の横断面ではコーンハイム野Cohnheim's fieldと呼ばれる斑紋がみられる.生の筋細胞を偏光顕微鏡でみると筋原線維は複屈折性で暗調なAA bandanisotropic band)と,単屈折性で明調なII bandisotropic band)との交互の縞としてみられ,これらの縞が各筋原線維で位相をそろえて配列しているので筋細胞の横紋cross striationとしてみえる.横紋はヘマトキシリン・エオジン染色*標本で,A帯は濃染され,I帯は淡染されることで明瞭に観察される.さらに,I帯の中央には濃染のZZ lineがみられ,Z線から次のZ線までを筋節sarcomereといい,筋原線維の構造的単位と考えられている.電子顕微鏡で筋原線維のサブユニットとして57nm径のアクチン細糸actin filament1020nm径のミオシン細糸myosin filamentとの2種の筋細糸myofilamentがみられ,これらの筋細糸は規則正しく平行に配列しており,筋収縮はこれら2種の細糸の滑りによって生じると考えられている(細糸すべり説).筋原線維は筋小胞体sarcoplasmic reticulumの網目によって包まれており,各線維間には多数のミトコンドリア* 

ミトコンドリア

ミトコンドリア

【英】mitochondria

【独】Mitochondrien

【仏】mitochondrie

【ラ】mitochondrion

同義語:糸粒体

 

細胞質内に存在する球形ないし棒状形の小体であり,旺盛に酸素を消費しながらATPを合成する役をになうために「細胞の呼吸装置」とも称される.糸粒体は自身の限界膜である外糸粒体膜,これに1020nmの細隙をへだてて対向する内糸粒体膜(この膜内に電子伝達系と酸化的リン酸化系の諸酵素が組み込まれる),および糸粒体基質(クエン酸回路*の酵素群がここに存在)からなる.内糸粒体膜の一部分が基質に向かいヒダ状または盲端管状に伸び出したものがクリスタcristaである.基質内に直径3050nmの顆粒が少数存在するが,これはCa2+,Mg2+などを含有し基質のイオン組成調節にあずかるとされる.糸粒体はDNA*と各種RNA*をそなえ,自己増殖能とタンパク合成能を示すことから,一つの生物体とみなすことができる.糸粒体は大きさや形の上でも細菌に似ており,細胞質内に寄生したある種の細菌がそのまま細胞内小器官として定着したものにほかならないとの見方がある.

が列をなして存在している.

の細いフィラメントの主成分であるばかりでなく,あらゆる細胞の細胞骨格cytoskeletonの構成成分であり,細胞の分裂,形態変化,運動などに関与している多機能タンパク質である.単量体(GアクチンG actin)は分子量42,000,375個前後のアミノ酸からなり,その一次構造は動物種間や組織間で大きな差はない.X線解析によると,アクチン分子は非対称的な2個のドメイン*

ドメイン

ドメイン

【英】domain

同義語:〔Ig〕分子内領域

 

生体高分子の構造上または機能上の単位を表す領域をいう.構造領域とも呼ばれる.免疫グロブリンはドメイン構造をもつ代表的なタンパク分子で,抗体活性基を構成する可変領域からなるV, VHドメイン,補体成分ならびにFc受容体との結合部位を含む定常領域を構成するC, CHドメインがあり,CHドメインは免疫グロブリンのクラスに固有の一次構造をもち,さらにC 1C 2C 3に分かれる.μ鎖とε鎖にはC 4ドメインが加わる.

からなり,ドメイン間の大きな裂け目にATP(アデノシン三リン酸*)

アデノシン三リン酸

アデノシンサンリンサン

【英】adenosine triphosphateATP

【独】Adenosintriphosphat

【仏】ade´nosine triphosphate

 

アデニンヌクレオチドのうち,リン酸を3個結合したもの.5′‐アデノシン三リン酸は分子内に2個の高エネルギーリン酸結合をもち,生合成,能動輸送,筋収縮,生物発光など多彩なエネルギー要求反応に用いられる.解糖系や発酵などの嫌気的代謝によっても生成するが,ミトコンドリアにおける酸化的リン酸化反応により効率よく生産される.RNAや補酵素の構成成分となるほか,種々のリン酸化反応のリン酸供与体ともなり,アデニル酸シクラーゼ*

アデニル酸シクラーゼ

アデニルサンシクラーゼ

【英】adenylate cyclase

同義語:アデニリルシクラーゼ,アデニルシクラーゼadenylyl〕 cyclase

 

EC 4.6.1.1. ATP ┻ cAMPPPiの反応を触媒する酵素*.

酵素

コウソ

【英】enzyme, ferment

【独】Enzym, Ferment

【仏】enzyme, ferment

 

生体内における化学反応を触媒するタンパク質で,生体細胞内で合成される.一般に熱に不安定であり,60℃以上では変性,失活する.物質代謝など生体内の多種,多様の反応は,個々の反応にそれぞれ固有の酵素によって触媒される.したがって反応が起こり得るかどうかは,その反応を触媒する酵素を生物が合成し得るかどうかに依存しており,酵素の種類と性質が生物種の特性を決めると考えられる.酵素反応は基質が酵素に結合することによって進行し,酵素は基質の構造に対してきわめて厳密な特異性(基質特異性substrate specificity)を示すのが普通である(例えば光学異性体を識別する).酵素表面の触媒作用に直接関与する部位を活性中心*といい,タンパク質の構造のみからできている場合と,触媒作用に不可欠な補酵素*coenzyme,補欠分子族*,金属などの配合族を含む構造から成る場合がある.配合族を除いた酵素(アポ酵素*)は酵素活性を示さない.酵素が機能する際には特定の条件(温度,pHなど)を必要とし,また種々の物質によって酵素活性が増大(賦活化)したり減少(阻害)したりすることもある.国際生化学連合酵素委員会は,触媒する反応の様式によって酵素を次の6群に分類している. 1)酸化還元酵素oxidoreductase(オキシドレダクターゼ*), 2)転移酵素transferase(トランスフェラーゼ*), 3)加水分解酵素hydrolase(ヒドロラーゼ), 4)除去付加酵素lyase(リアーゼ*), 5)異性化酵素isomerase(イソメラーゼ*), 6)合成酵素synthase(シンターゼ;→リガーゼ).これらは基質の性質,作用様式などによってさらに細かく分類される.→酵素反応

広く生物界に分布する.動物組織では細胞膜に結合し,活性中心を細胞内に向けて存在する.その活性はGTP結合タンパク質(Gタンパク〔質〕*)の制御を受ける.種々のペプチドホルモン,神経伝達物質,その他の生理活性物質が細胞膜の特異的受容体に結合するとその刺激がGTP結合タンパク質に伝わり,このタンパク質が次にアデニル酸シクラーゼと相互作用することによりこの酵素の活性を調節する.その結果,細胞内のcAMPの濃度が変動する.cAMPは細胞内二次メッセンジャーとして,細胞の代謝機能の調節をする.

によってcAMP(サイクリックAMP*)をも生ずる.

が結合する.Gアクチンは生理的イオン強度下でATPの加水分解を伴って重合体(FアクチンF actin)となる.Fアクチンは方向性をもつ二重らせんで,半ピッチ36nm13個の単量体を含む.筋肉ではほとんどすべてのアクチンは重合し,トロポミオシンtropomyosinやトロポニンtroponinとともに筋原線維の細いフィラメントを形成し,ミオシンフィラメントと相互作用して収縮を引き起こす(→アクトミオシンactomyosin).

アクトミオシン

アクトミオシン

【英】actomyosin

【独】Aktomyosin

【仏】actomyosine

 

アクチン*とミオシン*の複合体で,筋収縮*の試験管内モデルとして用いられる.FアクチンF actinとミオシンを混合すると矢尻構造をもつ複合体が形成される.生理的塩濃度では微細なゲル状粒子として懸濁しているが,MgATPを添加すると超沈殿を起こす.その際のATPase(アクトミオシンATPase)活性はミオシン単独の場合に比べ数十倍も高い.適当な条件を用いるとアクトミオシンファイバーactomyosin fiberを作製することも可能であり,これはMgATPによって収縮し,張力測定も可能である.アクトミオシンATPaseCa2+制御を受けないが,トロポミオシン‐トロポニン複合体を加えるとCa2+感受性が生じ,筋肉から0.6 MKClで長時間抽出して得られる“天然アクトミオシン”に相当する複合体が再構成される.アクトミオシンの三次元電子顕微鏡像に,X線解析から得られたアクチンおよびミオシン頭部の分子構造を重ね合わせることによって,複合体の分子モデルが作製されている.

非筋細胞ではアクチンは最も含量の多いタンパク質で全タンパク質の510%を占める.そのうち,約半分が重合し大小さまざまなフィラメントを形成している.これらは種々のタンパク質と結合して,ミクロフィラメントに代表される“アクチン含有線維”として種々の役割をもつ.細胞内にはアクチンの重合・脱重合を制御する種々のタンパク質(アクチン調節タンパク質actinbinding protein)が存在しており,多種多様なフィラメントを必要に応じて形成したり消失させたりする.このことによってアクチンは多機能性を発揮すると考えられている.

Actin

定義

アクチンは真核生物の細胞内で最も豊富に存在するタンパク質の一つで、細胞骨格を構成し、形状維持や細胞運動に中心的な役割を果たす。

構造と重合動態

G-アクチンとF-アクチン

ATP/ADP依存的重合

重合の調節因子

これらはいずれも細胞シグナルに応答して時空間的に構造変化を誘導する。

細胞内での主な役割

これらの機能はATP加水分解に伴うアクチン重合・脱重合サイクルがエネルギー源となっている。

アクチンアイソフォーム

真核生物には少なくとも6種のアクチンアイソフォームがあり、筋組織と非筋組織で異なる役割を担う。

 


細胞動態の可視化・応用

これらの手法により、アクチン細胞骨格の動的再構築が時空間的に捉えられつつある。

臨床・研究上の意義

アクチン機能の異常は細胞移動障害、筋ジストロフィー、がん転移など多岐にわたる疾患機構に関与する。

次に知りたいことや応用例

これらのトピックは細胞骨格の多機能性をさらに深く理解し、創薬やバイオエンジニアリングへの応用につながります。

アクチン異常による主な疾患

1. ACTN2変異による Core Myopathy

2. ACTB変異に関連する症候群

3. その他のアクチン異常に伴う疾患

 

 

ACTA1α-骨格筋アクチン)や ACTG1γ-細胞質性アクチン)の変異でも、ネマリンミオパチーや遺伝性難聴などの疾患が知られています。これらのアイソフォームごとの表現型や診断・治療戦略についてさらに深く知りたい場合はお知らせください。

アクチン異常によって引き起こされる主な疾患

以下では、アクチンやアクチン遺伝子の異常が関与する代表的な疾患をまとめます。最初に大分類を示し、その後で各疾患の概要を解説します。

大分類リスト

  1. 心血管疾患
  2. 先天性ミオパチー
  3. 発達障害・神経疾患
  4. 血小板減少症
  5. 感染症への易感性

1. 心血管疾患

2. 先天性ミオパチー

3. 発達障害・神経疾患

4. 血小板減少症

5. 感染症への易感性

以上のように、アクチンは細胞骨格として多彩な組織・器官で必須機能を担うため、その異常は筋肉、心臓、血液、神経、免疫など幅広い疾患に直結します。

さらに知っておきたい関連情報

これらを踏まえ、疾患の早期診断から新規治療法開発に向けた研究が世界各地で活発に進められています。 first

アクチン異常の具体的な症例

以下に、文献で報告されている代表的なアクチン細胞骨格異常の症例を2例示します。

症例1Alzheimer病大脳皮質神経細胞におけるアクチン骨格異常

症例2Baraitser-Winter cerebrofrontofacial syndromeBWCFF)に伴うACTB変異例

これら以外にも、

ご希望があれば、これら他疾患の臨床経過や遺伝子変異情報を詳しくまとめてご紹介できます。

アクチン異常の治療法

アクチン異常に伴う疾患の治療は、基本的に「発症メカニズムに応じた対症療法」と「分子レベルでの新規アプローチ」に大別できます。

1. 対症療法

  1. 心筋症(ACTC1変異)
  1. 先天性ミオパチー(ACTA1変異)
  1. 発達障害・神経疾患(ACTB変異など)
  1. 血小板減少症

2. 分子標的・新規治療戦略

3. 臨床応用に向けた研究展望

これらのアプローチは現在、基礎研究〜前臨床研究の段階にありますが、数年以内の臨床試験開始が期待されています。アクチン骨格は全身の多様な組織で機能するため、疾患サブタイプごとの特異的な分子標的薬開発がカギとなっています。

今後はエビデンスを積み重ねつつ、患者さん個々の遺伝子変異や細胞モデルに基づくオーダーメイド治療への展開が進むでしょう。

遺伝子治療の具体的な方法

遺伝子治療は大きく分けて体内(in vivo)と体外(ex vivo)のアプローチがあり、それぞれ特徴的な技術と手順を持ちます。

1. in vivo 遺伝子置換療法

  1. ベクター選択
  1. 投与経路
  1. 代表的成功例

2. ex vivo 細胞修飾療法

  1. 患者細胞の採取
  1. 遺伝子導入&選抜
  1. 患者への移植
  1. 適用例

3. 遺伝子編集技術

4. 核酸医薬(ASOsiRNA

5. 合成mRNA療法

関連トピック

これらを組み合わせ、「個々の変異プロファイルに最適化したオーダーメイド遺伝子治療」の実現が期待されています。

アクチン異常研究の最新動向

アクチン異常を解明し、治療に結びつけるための研究は多岐にわたっています。特に2025年以降注目されているテーマを以下に整理しました。

1. ナノスケール構造の動的再構築解析

2. 分子レベルでの動態制御メカニズム解明

3. 細胞内局所合成とコンパートメント制御

4. 遺伝子・細胞治療技術の応用

まとめと展望

今後は上記技術を組み合わせ、

といった方向性が加速していきます。これらの研究成果は、アクチン異常に起因する心筋症・ミオパチー・神経疾患への新たな治療標的発見・創薬へとつながることが期待されています。