ヒトの神経の名称一覧

ヒトの神経の名称一覧(ヒトのしんけいのめいしょういちらん)は、人間の神経の名称を一覧にしたものである。

人の神経系の分類は、基本的には、2種類ある。一つは、中枢神経系末梢神経系とに分ける分け方であり、もう一つは、体性神経系自律神経系とに分ける分け方である。

目次

1中枢神経系 中枢神経系

終脳 Telencephalon

中脳 Mesencephalon; Midbrain

後脳 Metencephalon

脊髄 Spinal Cord

末梢神経系

脳神経

脊髄神経

頚神経

胸神経

腰神経

仙骨神経

尾骨神経

関連項目

脳神経


外部リンク

対訳版神経系 - 慶應義塾大学医学部 解剖学教室 船戸和弥

嗅神経

脳神経

I脳神経 – 嗅神経

II脳神経 – 視神経

III脳神経 – 動眼神経

IV脳神経 – 滑車神経

V脳神経 – 三叉神経

VI脳神経 – 外転神経

VII脳神経 – 顔面神経

VIII脳神経 – 内耳神経

IX脳神経 – 舌咽神経

X脳神経 – 迷走神経

XI脳神経 – 副神経

XII脳神経 – 舌下神経

  

 

嗅神経(きゅうしんけい、olfactory nerve)は、12対ある脳神経の一つであり、最も頭側から分岐していることより第I脳神経とも呼ばれる。嗅覚を司っており、運動機能を持たない純知覚性の脳神経である。

嗅覚は発生学的には古い系であり、多くの動物では高度に発達しているにもかかわらず人間(ヒト)ではあまり発達していない。これは人間が嗅覚よりも視覚などの他の感覚に頼ってきた結果だと考えられている。

嗅神経と視神経は脳幹から分岐していない脳神経である。

嗅覚の経路

鼻腔の天蓋の鼻粘膜嗅部には嗅細胞受容体が存在している。嗅細胞の集まりは嗅糸(きゅうし)と呼ばれ、嗅糸は篩骨篩板の小孔を通って嗅球(きゅうきゅう)へと入る。嗅球から嗅索を通じ背側へと走行した後内・外側嗅条へと分かれて嗅覚中枢へと達する。

外部リンク

·         嗅神経[Ⅰ] 慶應医学部 解剖学教室 船戸和弥

 

視神経

 

 

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/e/ed/Human_eye_cross-sectional_view_grayscale.png/220px-Human_eye_cross-sectional_view_grayscale.png

人間の目の断面図

 https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/c/c0/Gray722.png/220px-Gray722.png
視神経の経路


脳神経

I脳神経 – 嗅神経

II脳神経 – 視神経

III脳神経 – 動眼神経

IV脳神経 – 滑車神経

V脳神経 – 三叉神経

VI脳神経 – 外転神経

VII脳神経 – 顔面神経

VIII脳神経 – 内耳神経

IX脳神経 – 舌咽神経

X脳神経 – 迷走神経

XI脳神経 – 副神経

XII脳神経 – 舌下神経

  

 

視神経(ししんけい、optic nerve)は12対ある脳神経1つであり、第II脳神経とも呼ばれ、視覚を司る。前頭部に位置しており、嗅神経とともに脳幹から分岐しておらず、間脳に由来する中枢神経系の一部と見なされているが、歴史的に末梢神経に含めて考えられている。

視神経は主に網膜から第一次視覚中枢まで伸びる神経線維からなる。網膜の神経節細胞から起こり、そこから伸びる軸索視中枢に情報を伝達する、間脳視床の一部である外側膝状体と、中脳にある上丘まで続く。

視神経は視神経管を通り眼窩から抜け出す。その後、後内側に走り、視交差を作り、半交差を行う。

外側膝状体から視放線の神経線維は後頭葉の視中枢へと向かう。 より詳細には、反対側上部の視界からの情報を伝える視神経はマイヤーループを横断し、後頭葉において鳥距溝の下にある舌状回で終端に達する。一方反対側下部の視界からの情報を伝える視神経はより上で終端に達する。

視神経は約100万の神経線維を持つ。この数は網膜にある約13000万の受容体に比べ少なく、これは暗に、情報が視神経を通り脳へと行くまでに網膜内で十分な前処理が行われていることを示している。

網膜表面で、視神経が目から出るところは、光受容体が無いため、盲点となる。

視神経の損傷は、一般に瞳孔異常視野狭窄失明を引き起こす。視野狭窄では、どの視神経のどの部位に損傷を受けたかにより、見えなくなる部位が異なる。

関連項目

·         緑内障

·         視野障害

·         同名半盲

·         両耳側性半盲

·         ピカチュリン

動眼神経

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

脳神経

I脳神経 – 嗅神経

II脳神経 – 視神経

III脳神経 – 動眼神経

IV脳神経 – 滑車神経

V脳神経 – 三叉神経

VI脳神経 – 外転神経

VII脳神経 – 顔面神経

VIII脳神経 – 内耳神経

IX脳神経 – 舌咽神経

X脳神経 – 迷走神経

XI脳神経 – 副神経

XII脳神経 – 舌下神経

  

 

動眼神経(どうがんしんけい、oculomotor nerve)は、12対ある脳神経の一つで、III脳神経とも呼ばれる。中脳から出て、眼筋と呼ばれる筋群の大部分 (外側直筋上斜筋以外) を支配し、眼球運動にかかわる。また瞳孔収縮や水晶体 (レンズ) の厚みの調節も行う。

目次

 1発生

発生

受精4週までには神経核は形成される[1]。全脳神経中、動眼神経核のみが中脳由来である(第Iおよび第II脳神経は終脳から、第IV脳神経以下は菱脳から発生する[1]。特に第IV脳神経である滑車神経核は中脳に存在するが、発生学的には菱脳由来であることに注意)。中脳の基板から体性遠心性神経である動眼神経核および一般内臓遠心性神経 (不随意筋を支配する神経。ここでは具体的には副交感神経) であるエディンガー・ウェストファル核(動眼神経副核)が形成される[2]。一般内臓遠心性神経の節前線維はエディンガー・ウェストファル核由来だが、神経節 (網様体神経節) および節後線維は神経堤に由来する[3]

解剖

 

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/2/2d/Horizontal_section_of_mibrain-superior_colliculus-ja.svg/350px-Horizontal_section_of_mibrain-superior_colliculus-ja.svg.png

動眼神経の起始部。中脳の断面。
 https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/b/bf/Gray571.png/350px-Gray571.png

 

海綿静脈洞の斜断面。赤は内頚動脈、黄色は脳神経。一番上にあるのが動眼神経。

動眼神経核は中脳の最吻側で上丘の高さにあり、正中に近く室傍灰白質 (中心灰白質) の腹側、赤核の背内側に位置する[4][5][6]。動眼神経の主要な線維 (体性神経) はこの群から出る。エディンガー・ウェストファル核(動眼神経副核)は動眼神経核の背側・吻側に隣接している[7]。この核から出た線維 (副交感神経節前線維) も動眼神経の一部をなす。副交感線維には網様体神経節への線維以外に、下部脳幹・小脳脊髄へ投射するものもある。脊髄に投射する線維は、側索を下降してレクセドの第I層および第V層に終始し、腰髄レベルまで下降する。この線維は感覚 (特に侵害刺激) 受容の調節を行っていると考えられる[8]

動眼神経核は以下の部分 (亜核) から構成される[9]

外側体性神経核群・・・外眼筋を支配する

背側核・・・下直筋 (一部内側直筋を支配)。交叉しない

中間核・・・下斜筋。 交叉しない

腹側核・・・内側直筋。 交叉しない

内側核・・・上直筋。 交叉する

尾側中心核・・・上眼瞼挙筋を支配。 交叉するものとしないものがある

内臓神経核群・・・副交感節前線維が出る。交叉しない

エディンガー・ウェストファル核・・・外側内臓核 (LVCC)、内側内臓核 (MVCC) に分かれている

前正中核・・・エディンガー・ウェストファル核とほぼ同じ機能。

また副動眼神経核と呼ばれる、次の核群がある。

カハール間質核・・・前庭神経上核および内側核、視蓋前野、前頭眼野および小脳室頂核からの投射を受ける。遠心線維は後交連腹側で交叉して、対側の体性神経核群 (腹側核を除く)、両側の滑車神経核、同側の前庭神経内側核などに投射する。滑動追従眼球運動や垂直眼球運動、頭囲と姿勢の制御に関与している。

ダルクシェヴィッツ核・・・中心灰白質の腹外側縁の内部にある。この核からの線維は主に後交連核に投射するが、動眼神経核群や下部脳幹にも投射する。この核へは、脊髄からの上行線維 (温痛覚刺激の伝導路である前外側線維系のうち脊髄中脳路)[10] 、また小脳の歯状核・球状核・栓状核からの線維が上小脳脚を経由して投射している[11]

後交連核・・・中心灰白質の背側、後交連線維に接しており、視蓋前核や視床後核と交通している。サルの脳でこの線維を後交連の正中線で切断しても対光反射は保たれる。一方後交連核そのものとカハール間質核からの交叉線維をともに傷害すると、両側眼瞼の収縮と垂直眼球運動の障害が起きる。

動眼神経核およびエディンガー・ウェストファル核から出た線維は中脳の正中付近から腹側に走って合流し、一部は赤核を貫通して脚間窩から動眼神経となって中脳の外に出る。合流した動眼神経は副交感神経が外縁を形成するかたちで一つの束となって中頭蓋窩を吻側に向かう。まず上小脳動脈と後大脳動脈の間を挟まれるように抜けて後交通動脈の外側を並走、硬膜を抜けて海綿静脈洞にはいる[12]。。動眼神経は海綿静脈洞の外側壁をつたって (図を参照) 上眼窩裂から眼窩に出たのち、上直筋上眼瞼挙筋を支配する上枝と下直筋内側直筋下斜筋を支配する下枝に分かれる。

下枝はさらに毛様体神経節に枝を出す。この枝をなす線維はエディンガー・ウェストファル核由来の副交感性線維である。その線維は毛様体神経節で中継されたのち、短毛様体神経となって毛様体筋瞳孔括約筋を支配する。

一方動眼神経核に投射する線維には、脳幹網様体・カハール間質核・前庭神経核の一部・外転神経の核間線維・傍舌下神経核・内側縦束吻側間質核・視蓋前オリーブ核などがある。大脳皮質からの直接投射はないが、刺激は網様体を介在して届く。上丘からの直接投射もないが、こちらは隣接する室傍灰白質に投射している[13]

機能

動眼神経は、眼球運動に強く関わるほか、上眼瞼をあげて「目を開く」運動、毛様体により水晶体(レンズ)の厚みを調節してピントを合わせる運動、瞳孔括約筋により瞳孔を収縮させて水晶体に入る光の量を調節する運動を司る。

光が網膜に当たると、視神経を通る信号が視蓋前核、エディンガー・ウェストファル核で中継されて動眼神経の副交感性線維に伝わる。この信号は毛様体神経節]通って瞳孔括約筋を収縮させる。この反射対光反射または瞳孔反射と呼ぶ。左右の視蓋前核は後交連を介してつながっているため、片側の視神経から来た信号が両側の視蓋前核に伝わり、以下の経路を興奮させるParent (1996) p。そのため片眼だけに光を当てても、両眼の瞳孔が収縮する(光を当てた側の瞳孔収縮を直接対光反射または直接瞳孔反応、反対側の瞳孔収縮を間接瞳孔反応または共感性対光反射と呼ぶ)。

見ている物が近づいたり遠ざかったりしたときにピントを合わせる機能を調節反射という。また遠方視から急にごく近く(1020cm程度)を見るときに両眼が内転(いわゆる寄り目の状態)し、瞳孔が収縮する反射を輻輳反射という。調節反射と輻輳反射を合わせて近見反射という。

疼痛刺激を顔面、頸部、胸部、上肢に与えると両側の瞳孔が1-2ミリ散大するのを網様体脊髄反射と呼ぶ[14]。痛覚刺激のみで実施できるため、意識障害があるときの脳幹障害の判定にとって重要である[15]

眼球運動に関わる神経は、動眼神経のほかに上斜筋を支配する滑車神経外側直筋を支配する外転神経がある(外眼筋も参照のこと)。

通常ものを眼で追う運動 (追視) は両眼が共同して行う。正常ならこの時眼球の動きはゆっくりと滑らか (滑動性眼球運動 smooth pursuit eye movement) であるか、素早い動き (衝動性眼球運動 saccadic eye movement) である[16]。これと似た用語だが、眼球運動が正常で滑らかなときは滑動性 (スムース smooth)、一方異常で滑らかでない時を衝動性 (サッケーディック saccadic) と呼ぶ[17]

水 平眼球運動は外転神経と共同して行われる。両眼が同時に右方あるいは左方を見る (側方注視) ための外転・動眼神経の協調は背側にある傍正中橋網様体 (parmedian pontine reticular formation, PPRF) という核がかかわっている。衝動性眼球運動の中枢は前頭眼野で、ここから経路は不明だが、反対側のPPRFに命令が伝わる[16]PPRFからは同側の外転神経核と、眼運動交叉を通って対側の動眼神経核に命令が伝わる[18] 。すなわち右半球の大脳皮質の命令によって、両目の左側への水平視が起き、左半球からの命令は右方への水平視が起きる。このため、PPRFより上部の障害では、障害部位と同じ方向への眼球運動麻痺 (反対方向への眼球偏倚) が、PPRFの障害では障害部位と反対側の眼球運動麻痺 (障害側への眼球偏倚) が起きる[16]

一方、垂直性の共同注視運動についてははっきりわかっていないが、脳幹の中枢は内側縦束吻側間質核[18]やダルクシェヴィッツ核[19]と考えられているが、後交連の病変でも垂直共同注視麻痺が起きる[19]ことは、上記後交連核のところで記したとおりである[9]

異常所見

動眼神経麻痺内頚動脈後交通動脈の分岐部(IC-PC)にできた動脈瘤に合併することが多い。また糖尿病合併症(微小血管障害 microangiopathy)である末梢神経障害のひとつとして動眼神経麻痺が起きることもよく見られる。 その所見は(1) 眼瞼下垂斜視複視(物が二つに見える)、(2) 散瞳、対光反射・調節反射の消失などである。(1) 外眼筋のみの麻痺で起こり(外眼筋麻痺)、これに対して(2)内眼筋麻痺という。動脈瘤に伴う場合は、初期には散瞳や対光反射の消失など自律神経障害のみが起き、眼瞼下垂などの外眼筋麻痺は必ず遅れて現れる。一方糖尿病に伴う場合は概して外眼筋麻痺による複視や眼瞼下垂が起こりやすく、瞳孔症状を欠くことがある(pupillary sparing)。これらはすべて末梢性の動眼神経麻痺である。外眼筋麻痺はギラン・バレー症候群トロサ・ハント症候群などで起こることがあり、神経性全外眼筋麻痺と呼ぶ。また動眼神経麻痺以外にも、重症筋無力症などの神経筋接合部の障害、眼筋ミオパチーなど眼筋そのものの異常で起こる場合がある。

中枢性の動眼神経麻痺は、古典的な3徴のひとつに対光反射の消失(他は心停止と呼吸停止)があげられるように、脳幹の死すなわち脳死の一連の現象の一つとして起こるというイメージがある。しかし対光反射の消失はたとえばアーガイル・ロバートソン瞳孔(近見反射は正常に保たれ、神経梅毒で見られる)やアディー症候群(原因不明)でも起こる。他にはウェーバー症候群、クロード症候群、ベネディクト症候群、ノートナーゲル症候群、パリノー症候群などの脳幹障害で動眼神経麻痺が起こる。

1.    ^ a b Sadler (1995) p.404

2.    ^ Sadler (1995) pp.391-393

3.    ^ Sadler (1995) pp.405-408

4.    ^ フィックス (2007) p.79

5.    ^ Parent (1996) pp.542-544

6.    ^ Nieuwenhuys et al (2008) p.208

7.    ^ Parent (1996) p.543

8.    ^ Parent (1996) pp.397-398

9.    ^ a b Parent (1996) pp.542-545

10. ^ ハインズ (1996) pp.164-165

11. ^ ハインズ (1996) pp.194-195

12. ^ 後藤・天野 (1992) pp.98-99, pp.128-129

13. ^ Parent (1996) pp.545-546

14. ^ 岩田 (1994) pp.339-340

15. ^ 田崎ら (2004) pp.112-113

16. ^ a b c 岩田 (1994) p.51

17. ^ 田崎ら (2004) p.115

18. ^ a b 田崎ら (2004) p.212

19. ^ a b 岩田 (1994) p.55

出典

滑車神経

脳神経

I脳神経 – 嗅神経

II脳神経 – 視神経

III脳神経 – 動眼神経

IV脳神経 – 滑車神経

V脳神経 – 三叉神経

VI脳神経 – 外転神経

VII脳神経 – 顔面神経

VIII脳神経 – 内耳神経

IX脳神経 – 舌咽神経

X脳神経 – 迷走神経

XI脳神経 – 副神経

XII脳神経 – 舌下神経

  

 

滑車神経(かっしゃしんけい、Trochlear nerve)は12対ある脳神経の一つであり、第IV脳神経とも呼ばる。上斜筋の運動を行う。上斜筋はを外方(耳側)や下向きに動かす。

目次

·         1 滑車神経の走行

·         2 参考文献

·         3 関連項目

·         4 外部リンク

滑車神経の走行

滑車神経の核は中脳下丘の高さで、中脳水道灰白質の腹側に存在する。正中近くにある運動核である。

滑車神経核からでた神経線維は中脳で交差し、下丘の下から脳幹背側を出て、その後中脳の周りを、小脳テント内側縁に沿って前方へ向かう。海綿静脈洞外側壁内では動眼神経の下、三叉神経第1枝(眼神経)の上を走行する。最後は上眼窩裂を通り、眼窩内へ入る。

三叉神経

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

神経: Trigeminal nerve

 

Gray778 Trigeminal ja.png

三叉神経とその枝

 Brain human normal inferior view with labels en.svg

Inferior view of the human brain, with the cranial nerves labelled.

 

ラテン語

nervus trigeminus

 

英語

Trigeminal nerve

 

グレイの解剖学

書籍中の説明(英語)

 

分岐

眼神経
上顎神経
下顎神経

 

MeSH

Trigeminal+Nerve

 

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脳神経

I脳神経 – 嗅神経

II脳神経 – 視神経

III脳神経 – 動眼神経

IV脳神経 – 滑車神経

V脳神経 – 三叉神経

VI脳神経 – 外転神経

VII脳神経 – 顔面神経

VIII脳神経 – 内耳神経

IX脳神経 – 舌咽神経

X脳神経 – 迷走神経

XI脳神経 – 副神経

XII脳神経 – 舌下神経

  

三叉神経(さんさしんけい、英:trigeminal nerve)は、12対ある脳神経の一つであり、第V脳神経(CN V)とも呼ばれる。三叉とはこの神経が眼神経(V1)上顎神経(V2)下顎神経(V3)の三神経に分かれることに由来する。体性運動性知覚性の混合神経であり、脳神経の中で最大の神経である。

目次

概要

三叉神経のうち、知覚性の神経線維は、頭部の大部分に分布し、その皮膚感覚の大部分を担う。 の外側にある三叉神経主知覚核:識別知覚(触圧覚)、三叉神経脊髄路核:主情知覚(温痛覚)、三叉神経中脳路核:(咀嚼筋の筋紡錘の受容器および圧覚)からでて、知覚根を作り、側頭骨錐体部の三叉神経圧痕上で三叉神経節を作り、ここを出てから眼神経、上顎神経、下顎神経に分岐する。

体性運動性の神経線維は咀嚼筋咬筋側頭筋外側翼突筋内側翼突筋)、深頭筋顎舌骨筋顎二腹筋前腹を支配している。三叉神経運動核からでて、運動根を作り、三叉神経節の下側を通り、下顎神経に合流する。すなわち、眼神経及び上顎神経には体性運動性の神経線維は存在しない。

知覚性繊維

 https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/2/20/Gray784.png/250px-Gray784.png

ヒト頭部における三叉神経各枝の分布。緑:眼神経、赤:上顎神経、黄:下顎神経

三叉神経の知覚性繊維は、3つの主要な枝すべてに含まれる。

眼神経V1)は上眼窩裂superior orbital fissure)を出たのちに、眼窩の背側に分布し、前頭部や瞼、鼻の周囲(鼻翼挙筋を除く)、前頭洞などを支配する。
上顎神経V2)は正円孔foramen rotundum)を出たのちに、名称のとおり上あごの全体にわたって分布し、歯茎や上唇、口蓋や下瞼、頬部、篩骨洞蝶形骨洞上顎洞などを支配する。
下顎神経V3)は卵円foramen ovale)を出たのちに、下あごの全体にわたって分布し、歯茎や下唇、頬部や外耳の一部などを支配する。

運動性繊維

末梢神経の分類

三叉神経の枝は下記の通りである。

関連項目

外転神経

脳神経

I脳神経 – 嗅神経

II脳神経 – 視神経

III脳神経 – 動眼神経

IV脳神経 – 滑車神経

V脳神経 – 三叉神経

VI脳神経 – 外転神経

VII脳神経 – 顔面神経

VIII脳神経 – 内耳神経

IX脳神経 – 舌咽神経

X脳神経 – 迷走神経

XI脳神経 – 副神経

XII脳神経 – 舌下神経

  

外転神経(がいてんしんけい、Abducens nerve)は12対ある脳神経の一つであり、第Ⅵ脳神経と呼ばれる。から出て外側直筋支配する。外側直筋が収縮すると眼球外側を見るように動く。

目次

発生

解剖

 https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/ab/Inferior_Pons-ja.svg/300px-Inferior_Pons-ja.svg.png

橋下部の横断面。外転神経核は顔面神経の線維束に囲まれた位置にある。

外転神経核菱形窩の中ほど、つまり橋の後面にある顔面神経丘の中に入っている。顔面神経丘は外転神経核による隆起を顔面神経運動核から出た線維束が取り巻いている場所なのでこの名がある。ここから出た外転神経の線維は橋を貫いて方に向かい、橋と延髄の境目から出る。外転神経は海綿静脈洞を通って上眼窩裂から眼窩に出て、外側直筋に入る。

機能

外転神経は外側直筋を収縮させ、眼球を外側に向かって水平に動かす(これを眼球の外転という)。眼球の運動に関わる神経は、ほかに動眼神経滑車神がある。

異常所見

外転神経が麻痺すると、眼球外転ができなくなり、正常よりも内側を向くようになる。すると両眼の視線が見たい物の場所で交わらなくなり、複視(物が二つに見えること)が現れる。外転神経の麻痺は脳底動脈瘤腫瘍、髄膜血管梅毒糖尿病外傷などで起こり、眼筋麻痺の中でもっとも頻度が高い。これは他の外眼筋を支配する動眼神経核滑車神経核中脳に存在するのに対し、外転神経核が橋の最尾側(延髄との境界近く)に存在するため、眼筋までの末梢線維が走行する距離が最も長く、障害されやすいからである。髄膜炎などで頭蓋内圧が亢進したときも、外転神経が圧迫されて麻痺することがある。外転神経麻痺顔面神経麻痺が合併した場合、顔面神経丘の近くに病変があり、外転神経核と顔面神経の両方が傷ついたらしいとわかる。

参考文献

·         Werner Kahle、長島聖司・岩堀修明訳『分冊 解剖学アトラスIII』第5版(文光堂、ISBN 4-8306-0026-8、日本語版2003年)

·         田崎義昭・斎藤佳雄、坂井文彦改訂『ベッドサイドの神経の診かた』第16版(南山堂、ISBN 4-525-24716-92004年)

顔面神経

 

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/1/1f/Cranial_nerve_VII.svg/300px-Cranial_nerve_VII.svg.png

顔面神経

脳神経

I脳神経 – 嗅神経

II脳神経 – 視神経

III脳神経 – 動眼神経

IV脳神経 – 滑車神経

V脳神経 – 三叉神経

VI脳神経 – 外転神経

VII脳神経 – 顔面神経

VIII脳神経 – 内耳神経

IX脳神経 – 舌咽神経

X脳神経 – 迷走神経

XI脳神経 – 副神経

XII脳神経 – 舌下神経

  

 

顔面神経(がんめんしんけい、facial nerve)は、12ある脳神経の一つで第七脳神経(CNVII)とも呼ばれる。

目次

概説

狭義の顔面神経は、顔面に分布し主として表情筋の運動を支配する。この神経と内耳神経の間に中間神経と呼ばれる神経があり、広義にはこれを含めて顔面神経と呼ぶ。内耳神経と一緒に側頭骨錐体を貫き、さらに単独で顔面神経管という弓状の骨の管を通り、茎乳突孔から出てきて顔面全体に分岐する。顔面神経管を通る途中から涙腺唾液腺分泌味覚(舌の前部3分の2)などに関係する枝が出て骨の細管を通り抜け関連する神経節舌神経などに入っていく。顔面神経の神経線維には4種類あり、特殊内臓遠心性線維(special visceral efferent fiber, SVE) 一般内臓遠心性線維 (general visceral efferent fiber, GVE) 特殊内臓求心性線維 (special visceral afferent fiber, SVA) 一般体性求心性線維 (general somatic afferent fiber, GSA) と呼ばれる。

特殊内臓遠心性線維

運動神経線維であり、顔面表情筋広頸筋頬筋アブミ骨筋顎二腹筋後腹などを支配する。この神経線維の細胞体尾側にある顔面神経運動核に存在する。顔面神経運動核はさらに背内側核腹内側核中間核外側核に分けられ、それぞれ異なる筋群を支配している。背内側核からの線維は後耳介神経となって耳介筋後頭筋前頭後頭筋の一部)を支配する。腹内側核から出た繊維は顔面神経頸枝として広頸筋を支配している。内側核の中にはアブミ骨筋を支配するものもあると考えられている。顔面神経側頭枝と頬骨枝中間核から出て前頭筋前頭後頭筋の一部)と眼輪筋皺眉筋および頬骨筋を支配する。外側核からの線維は顔面神経頬枝となって頬筋頬唇筋を支配している。他の動物と比較すると、ヒトの顔面神経運動核では頬唇筋を支配する外側核が顕著に発達しており、一方内側核群はかなり小さくなっている。

 https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/0/08/Head_facial_nerve_branches.jpg/350px-Head_facial_nerve_branches.jpg

茎乳突孔を出た後の特殊内臓遠心性線維(運動線維)の分布

これらの遠心性線維は顔面神経運動核から出てまず第四脳室底面のある背内側に向かう。正中を走る内側縦束とやや外側にある外転神経核の間を通り、外転神経核を巡るように鋭角に折れ曲がる(ここが第四脳室底の顔面神経丘の直下である)。ここから腹外側に向かい、三叉神経脊髄路の内側、上オリーブ核の外側を通り、橋の最尾側(小脳橋角部と呼ばれる)で脳幹から外に出る。外転神経を巡るループの事を運動神経内膝 (internal genu of facial nerve) という。末梢に出た繊維は顔面神経管に入って顔面神経外膝で折れ曲がり、はじめ外側へ走行した後に下行する。顔面神経管の中でアブミ骨筋への枝を分枝し、茎乳突孔から顔面に出てそれぞれの支配筋へと分枝する。

顔面神経運動核への投射には以下のようなものがある。三叉神経脊髄路核からの二次性ニューロン、これは角膜反射などの三叉神経顔面反射にかかわる。皮質延髄路からの直接投射、これは左右両側性に投射する。皮質延髄路から網様体を経由した間接投射も存在する。交叉性の赤核延髄路からの投射は背内側核と中間核(すなわち上部顔面筋を支配する部位)にのみ投射している。中脳網様体からも同側性に投射がある。聴神経の二次あるいは三次ニューロンも顔面神経核に投射すると考えられている。これは聴性顔面神経反射(突然大きな音を聞いたときに目をつぶったり、アブミ骨筋が収縮して耳小骨の振動を抑制する反射)に関係している。

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中耳内耳の構造と運動神経内耳神経
1
前庭神経
2
蝸牛神経
3
.顔面神経
4
膝神経節顔面神経外膝
5
鼓索神経
6
蝸牛管
7
半規管
8
つち骨
9
鼓膜
10
耳管ユースタキー管

中間神経

小脳橋角部から狭義の顔面神経と内耳神経(より正確には前庭神経)の間を走行して末梢に出てくる。この神経はSVAGSAGVEの各繊維を含んでいる。SVAGSAの各求心性神経線維は膝神経節 (geniculate ganglion) 神経細胞体を持つ。

特殊内臓求心性線維 (SVA)

SVAは舌の前3分の2からの味覚を鼓索神経 (chorda tympani nerve) を通って伝達する(後ろ3分の1については舌咽神経の支配)。中枢でこの線維は延髄孤束核 (solitary nucleus味覚中枢とも呼ばれる) に投射する。

一般体性求心性線維 (GSA)

GSA外耳道耳介、耳の後ろ部分の表在感覚を伝達する。中枢では三叉神経脊髄路核に投射する。

一般内臓遠心性線維 (GVE)

副交感線維である。橋背外側網様体に散在するアセチルコリン作動性ニューロンからなる上唾液核から出る。このニューロン群は橋から延髄まで続いており、延髄では下唾液核舌咽神経の核)や迷走神経背側運動核につながっている。副交感節前線維末梢に出ると顔面神経外膝の近傍で二つに分岐する。一方は大錐体神経となって翼口蓋神経節に達する。他方は顔面神経管内で顔面神経から分岐して鼓索神経となり、舌神経三叉神経III下顎神経のさらに枝神経)の枝として顎下神経節に達する。各神経節で節後線維シナプスを形成し、節後線維翼口蓋神経節から涙腺・鼻粘膜口腔粘膜の分泌および血管作動線維になる。また顎下神経節からの節後線維は、顎下腺および舌下腺に達する(より詳しい機能については自律神経系を参照)。

 https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/6/6b/Gray788.png/220px-Gray788.png

顔面神経の走行

顔面神経障害

別名、顔面神経麻痺(がんめんしんけいまひ)。末梢性顔面神経麻痺は病変の部位によって顔面筋の運動麻痺知覚障害自律神経障害などを起こす。

  1. 鼓索神経分岐より末梢、茎乳突孔付近での病変では顔面神経運動枝の完全麻痺が起きる。病変のある側で、額のしわ寄せができない、目をつぶれない、歯をむけない、口がすぼめない、また眼裂がひろがる、鼻唇溝(唇と頬の間にある溝)が浅くなる、口角が下がるなどの症状が見られる。患側では角膜反射が消失するが、角膜の感覚は保たれる(感覚は三叉神経支配のため)。
  2. 膝神経節よりも末梢、鼓索神経分岐よりも中枢側に病変があると、上記の症状に加えて舌の前3分の2の味覚が障害され、顎下腺および舌下腺の分泌障害、聴覚過敏が起こる。聴覚過敏は、アブミ骨筋の麻痺によって耳小骨の振動を抑制できなくなり、患側で異常に大きな音に聞こえる。
  3. 膝神経節よりも中枢側に病変があると上記のすべての症状に加え、涙腺の分泌障害が起こる。この部分で完全麻痺が起こると、舌の前3分の2の味覚が永久に失われる事がある。SVA線維は再生できないためである。一方副交感節前線維は再生するが、その際しばしば誤った再生をすることがある。障害前は顎下神経節に向かっていた線維が翼口蓋神経節に向かって再生する事がある。この結果、食事などの唾液腺刺激に対して涙が出てしまう現象がある(ワニの涙症候群)。膝神経節が水痘・帯状疱疹ウイルスによって冒されるラムゼイ・ハント症候群では、耳痛や外耳道耳介水疱形成に続いて上記のような症状が現れる。

特発性末梢性顔面神経麻痺(ベル麻痺、運動成分のみが麻痺する疾患)の病因はほとんどわかっていないが、顔面神経管内での何らかの原因による神経の腫脹によるものと考えられている。

中枢性の顔面神経麻痺は、皮質延髄路や皮質網様体路など上位運動ニューロンの病変で起こる。中枢性末梢性の顔面神経麻痺の最大の鑑別点は、中枢性の場合は額のしわ寄せが保持でき、眼輪筋の麻痺も程度が軽いことである。これは顔面神経のうち顔面の上半分の表情筋だけは両側の大脳皮質に支配されているため、一側の中枢に病変があっても麻痺が起こらないのである。そのため、顔面神経麻痺がある場合、額のしわ寄せができなければ、鑑別診断の中から、大脳および中脳における脳梗塞などの脳血管障害はまず除外してよいことになるが、小脳橋角部から顔面神経運動核に至るまでの間で脳血管障害が起きた場合は、小脳橋角部は膝神経節よりも中枢側に位置するため、額のしわ寄せができなくなる上に、前述したような末梢性顔面神経麻痺の種々の症状が発現し得る。ただし、この場合はウイルス感染ではないため、ラムゼイ・ハント症候群にみられる外耳道や耳介の水疱形成は生じない。また顔面神経には情動性支配というものがあり、経路は未知であるが運動野とは別の中枢にも支配されているため、皮質延髄路の途中に病変がある場合でも感情的刺激には反応して健側と同じように表情筋が動かせることがある。

関連項目

参考文献

膝神経節

 https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/3/34/Ear_internal_anatomy_numbered.svg/300px-Ear_internal_anatomy_numbered.svg.png

中耳・内耳の構造と運動神経・内耳神経
1
.前庭神経
2
.蝸牛神経
3
.顔面神経
4
.膝神経節(顔面神経外膝)
5
.鼓索神経
6
.蝸牛管
7
.半規管
8
.つち骨
9
.鼓膜
10
.耳管

 

膝神経節(しつしんけいせつ、geniculate ganglion)は頭頸部にある顔面神経神経節顔面神経管内にあり、顔面神経の神経線維(繊維)がL字型になっており(語源である 'genu' はラテン語で「」の意味)、また顔面神経のうち感覚神経神経細胞体がここに存在する。顔面神経を構成する運動線維、感覚線維、副交感線がここに集まり、この神経が支配する涙腺顎下腺舌下腺口蓋外耳道あぶみ骨筋顎二腹筋後腹、茎突舌骨筋顔面表情筋に神経線維を送る。

感覚線維および副交感線維は中枢から中間神経を通って膝神経節に達する一方、運動神経は狭義の顔面神経を経由している。副交感線維と感覚線維を含む大錐体神経は膝神経節の後面から分枝する。

膝神経節は他の頭頸部の神経節同様、左右両側の顔面神経に存在している。

蝸牛

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

蝸牛管から転送)

この項目では、内耳にあるカタツムリ状の器官について説明しています。陸棲巻貝の総称である蝸牛については「カタツムリ」をご覧ください。

 

蝸牛

 

Gray921 ja.png

ヒトの内耳(右側が蝸牛)

 

Gray928.png

蝸牛の断面図

 

英語

Cochlea

 

器官

感覚器

 

神経

聴神経

蝸牛(かぎゅう、cochlea)とは、内耳にあり聴覚を司る感覚器官・蝸牛管cochlear duct)が納まっている、側頭骨の空洞である。蝸牛管を指して「蝸牛」と言うこともある。蝸牛管は中学・高校の生物ではうずまき管と呼ばれる。 哺乳類では動物のカタツムリに似た巻貝状の形態をしているためこれらの名がある。

蝸牛管の内部は、リンパ液で満たされている。鼓膜そして耳小骨を経た振動はこのリンパを介して蝸牛管内部にある基底膜 (basilar membrane) に伝わり、最終的に蝸牛神経を通じて中枢神経に情報を送る。 解剖学的な知見に基づいた蝸牛の仕組みについての説明は19世紀から行われてきたが、蝸牛が硬い殻に覆われているため実験的な検証は困難であった。1980年代ごろよりようやく生体外での実験が本格化したものの、その詳細な機構や機能については依然謎に包まれた部分がある。

目次

構造

 https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/3/34/Malleus_and_Incus-Ice_cream_corn_sign.png/270px-Malleus_and_Incus-Ice_cream_corn_sign.png

正常な内耳のCT像、3が蝸牛に当たる。

ヒトの蝸牛はおよそ 2 巻半ほどに渦巻いた骨で覆われた閉じた管を形成しており、管を伸ばせば長さはおよそ 3 cm ほど、中耳側の基部の太さはおよそ 2mm ほどである。 蝸牛内部は渦巻く方向に沿って膜で仕切られた 3 つの区画、前庭階 (scala vestibuli)中央階 (scala media)鼓室階 (scala tympani) からなっている。 このうち、前庭階と鼓室階は蝸牛管の先端にあたる頂部でつながっており、共に外リンパ (perilymph) で満たされている。 対して、中央階はイオン能動輸送 (active transport) によってカリウム・イオンに富んだ内リンパ (endolymph) で満たされている。 そのうえ、中央階は外リンパよりも相対的に 80 mV ほど高い電位を保っている。

前庭階の基部には卵円窓(または前庭窓, oval window)という小さな穴があり、これを通じて中耳あぶみ骨 (stapes) は前庭階の外リンパへと振動を伝えることができる。 対応して一方の鼓室階の基部にも正円窓(または蝸牛窓, round window)と呼ばれる小さな穴が空いており、外リンパが振動で移動することを助けている。

 https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/0/0c/Cochlea-crosssection.png/270px-Cochlea-crosssection.png

蝸牛の断面の拡大図。蝸牛内を仕切る2つの膜のうち、基底膜の上に2種の有毛細胞を持つコルチ器がある。内有毛細胞と外有毛細胞の働きは対照的である。

中央階と鼓室階を区切る膜が基底膜であり、前庭階と中央階を分ける膜はライスナー膜Reissner's membrane)と呼ばれる。 基底膜は奥にいくほど幅広くかつ柔軟になっており、基部より頂部の方が 2 桁程曲げやすく、基部から頂部に至るほどより低い音に対応する固有振動数を持つ。 基底膜の中央階側にはコルチ器 (organ of Corti) と呼ばれる繊細で堅牢に構成された小さな器官が整然と配列されている。 コルチ器の上部には内有毛細胞と外有毛細胞と呼ばれる 2 種類の有毛細胞が蝸牛管に沿って規則正しく並んでおり、ヒトでは片耳で内有毛細胞が 3,500 ほど、外有毛細胞が 15,000 から 20,000 ほど存在する。 コルチ器上部には屋根のように蓋膜 (tectorial membrane) が覆いかぶさり有毛細胞それぞれから突き出した不動毛(聴毛, stereocilium)の束の先端と接するような位置にある。

このうち内有毛細胞が振動の情報を神経パルスへと変換する一次感覚受容器である。 蝸牛のラセン状の中心軸である蝸牛軸 (modiolus) には数多くの蝸牛神経節(ラセン神経節、spiral ganglion)があって、内有毛細胞とシナプス結合を形成している。 これらの神経細胞の軸索は蝸牛神経 (cochlear nerve) を形成し延髄にまたがるいくつかの蝸牛核 (cochlear nuclei) へと投射する。 興味深いことに、内有毛細胞より数の上ではるかに勝る外有毛細胞は逆に延髄オリーブ (olive) から遠心性の神経繊維を受け取っている。

機構

フォン・ベケシの進行波モデル

蝸牛管の機構について説明する最も素朴な見方は、それをピアノの弦のようにみなすことである。 すなわち周波数順に並んだ弦それぞれが入力に応じて共振し神経へと情報を伝えるのだとする。 実際、19 世紀にヘルムホルツは基底膜をそれぞれ異なる固有振動数をもつ繊維の集まりのように表現するモデルを提出していた。

こうした見方は1960年になってハンガリー出身のアメリカの生物物理学フォン・ベケシ (Georg von Békésy) により流体力学的相互作用を考慮した基底膜を伝わる進行波としてのより精緻なモデルで置き換えられた。 あぶみ骨から蝸牛の基部の液体に伝えられた純音の振動は流体の流れを作り出して基底膜を揺らしながら頂部へ向かって波として伝わる。 この振動は周波数に応じたある距離までしか到達しない。 入力が高い音なら振動はわずかしか伝わらず、低い音なら先端の方まで振動が及ぶ。 この限界の距離の少し前で基底膜の振動は最も大きくなり、異なる音の高さの純音はそれぞれ基底膜の蝸牛管に沿った異なる位置で振動パターンを作り出す。 このモデルではこのパターンが純音の神経反応と対応するとみなされるが、これは各位置に固有振動数を対応づける点ではピアノのモデルと大きくは違わない。

内有毛細胞による神経活動への変換

基底膜の振動はその上にあるコルチ器へと伝わり、蓋膜との間の相対的なずれによって内有毛細胞の不動毛の束をごくわずかに曲げることになる。 これによって不動毛の細胞膜にある機械的に動作する特殊なチャネル (TRPA 1) が開閉し内リンパからのカリウムの流入量が制御される。 これは内有毛細胞の膜電位の数 mV ほどの変動をまねく。 さらにこの変動は電位依存性のカルシウム・チャネル (voltage-gated calcium channel) から流入したカルシウム・イオンを通じてシナプス小胞 (synaptic vesicle) の放出をまねき、聴神経へと情報を伝達する。

蝸牛増幅器

現在、実際の蝸牛管の機構をうまく表すにはこれ以外にいくつかの非線形 (nonlinear) の効果を無視し得ないことが明らかになっている。 例えば、音圧レベルおよそ 3090 dB SPL 1000 倍の圧力の違いに相当する広い範囲にわたり、基底膜の振動の速度は数倍しか異ならない。 このことは基底膜が線形のフーリエ変換器のようなものではなく、非線形能動フィルターであるとみなさなければならないことを示している。

こうした非線形の機構としては蝸牛増幅器 (cochlear amplifier) とも呼ばれる巧妙なエネルギー散逸を伴う機械的フィードバック回路が考慮されている。 蝸牛は電子工学における再生回路のように働き、この仕組みによってはっきりしていなかった外有毛細胞とコルチ器の機能的役割が明確になった。 外有毛細胞も内有毛細胞と同じく不動毛のずれによって膜電位を変化させるがこれは信号として伝えられるのではなく運動細胞として外有毛細胞自体の長さを変化させている。 これは細胞膜にある電位依存性のタンパク質モーター (motor protein) によるものと考えられ、外有毛細胞のみに密集して存在するプレスチン (prestin) と名付けられたタンパクがそれであろうと考えられている。 外有毛細胞はこれにより最大で 20 kHz 以上もの周波数で振動でき、これは生体内の他の運動細胞よりはるかに高速な動作である。 有毛細胞が実際、基底膜を伝わる進行波の動きを変化させていることは、1991年に初めて実験的に示され、またこの振動によって上の非線型性を説明するモデルが提出されている。

また、液体の相互作用と蝸牛増幅器の効果を考慮した場合、基底膜の振動は隣接する周波数領域を抑制するようにはたらくと推測され、これは周波数の選択性を上げる効果をもつことが示唆されてきた。 一方で動物実験では、音声のような音に対して聴神経が固有振動数が大きく異なっているものでも同じような反応をすることが報告され聴神経がむしろ広い周波数に反応することが示唆されている。 これらの一見矛盾する報告は、蝸牛の役割を純音に対する反応の重ね合わせとして記述できる線形な特性を持つものとしてではなく、音の生物学的に意味のある特徴を適切に選択するような非線形の効果をもつものとして記述せねばならないことを示唆している。

耳音響放射

通常、感覚器官とは外界の刺激を受動的に受け取り中枢神経へと伝達するものであるが、蝸牛増幅器の概念はこの見方を覆すものであった。 実際、1978年にイギリスのケンプによって蝸牛が音を受動的に知覚するだけでなく、自ら小さな音をたてていることが明らかとなっていた。 これは何の刺激がないときにも、外部からの刺激への反応としても現れ、耳音響放射 (じおんきょうほうしゃ、otoacoustic emission, OAE) と呼ばれている。 適切な周波数の違いを持つ 2 種の純音を重ね合わせた刺激に対しては、それらとは別の周波数に非線形の効果による反応が表れることも明らかになっており、これは特に新生児に対する聴覚検査として臨床上も有用である。 この耳音響放射も蝸牛増幅器の活動によるものであると考えられている。

参考文献

三半規管

 

三半規管

Ear-anatomy.png

図中の9番が前半規管

Gray921 ja.png

ヒトの内耳(左半分が三半規管)

英語

Semicircular canal

器官

感覚器

動脈

茎乳突孔動脈


三半規管
(さんはんきかん)は平衡感覚(回転加速度)を司る器官であり、内耳前庭につながっている、半円形をしたチューブ状の3つの半規管の総称である。名前はその形状と数に由来する。

ヒトを含む脊索動物のほとんどが半規管を3つ持っているため三半規管と呼ばれるが、無顎類においては半規管が2つ(ヤツメウナギ類)ないし1つ(ヌタウナギ類)であるため、「三半規管」という呼称は器官の代表的な名称としては正確ではない。以下はヒトの三半規管についての解説であるが、基本的にほぼ全ての(無顎類以外の)脊索動物に共通である。

目次

構造と機能

3つの半規管、すなわち「前半規管」「後半規管」「外半規管(外側半規管、水平半規管とも)」は、それぞれがおよそ90度の角度で傾いており、X軸・Y軸・Z軸のように三次元的なあらゆる回転運動を感知することができる。なお、前半規管と後半規管は、膨大部でない方の片脚側が接合した総脚となっている。

半規管の外側は骨でできており(骨半規管)、そのすぐ内側に膜がある(膜半規管)。それぞれ内耳の骨迷路・膜迷路の一部を構成している。膜半規管の内部はリンパ液で満たされており、片方の付け根は膨大部となり内部に有毛細胞(感覚細胞)がある。その感覚毛はクプラ(膨大部頂)で結束されている。頭部が回転すると、体内にある三半規管も回転するが、内部の液体であるリンパ液は慣性によって取り残されるため、相対的には「三半規管の内部をリンパ液が流れる」ことになる。そのようにリンパ液が流れるとクプラも動き、それに付随した有毛細胞が刺激されることで、前庭神経からに刺激が送られ、体(頭部)の回転が感知できるしくみである。

回転が続くとリンパ液も一緒に回転してしまうので、体の回転が止まっても今度はリンパ液の回転がすぐには止まらず、誤った信号を脳へ送ることになる(“目が回る”状態)。また、水中では、耳孔内に冷たい水分が流れ込んでくるため、リンパ液の粘性が高まり、回転覚などが掴みにくくなる。その結果、場合によってはパニックに陥って上下の判断がつかなくなり、水面に出るのが困難になる。

機能強化

三半規管の機能は鍛錬によって強化が可能であり、これを鍛えることは内耳性の病変であるメニエール病回転性めまいなどの症状緩和にも役立つ。機能強化の具体的な方法としては、後ろ向きに歩く、ブランコで揺られる、回転した後に片足で立つ、首を上下前後左右斜めなどへ傾けたまま体を起動させる、マット運動での前転・後転、行く先に対して正面向き・横向き・斜めなど方向を変えて横たわった体勢から起き上がってのダッシュ、などがある。他にも多くの具体策があるが、症状改善が目的であれば病状に応じて無理のない方法で行い、スポーツ選手などにおいては可能であれば回転や各方向からの刺激に対して目を閉じるなど視覚補正が働かない条件の下で行うと、いっそう効果的である。

関連項目

·         内耳

·         空間識失調

·         良性発作性頭位めまい症

·         半規管と耳石器 - 脳科学辞典

耳小骨

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

つちから転送)

耳小骨

Illu auditory ossicles-en.svg

ヒトの耳小骨
Malleus:
ツチ骨、Incus:キヌタ骨、Stapes:アブミ骨

ラテン語

Ossicula Auditus

英語

Ossicles

器官

感覚器

 

耳小骨(じしょうこつ、Ossicles)とは、陸上脊椎動物(四足動物)の中耳内に存在する微小な骨であり、外部からとして鼓膜に伝わった振動内耳に伝える働きをする。

ほとんどの四足動物では中耳内の小骨は鐙骨のみで構成されるが、哺乳類では鐙骨(あぶみこつ)・砧骨(きぬたこつ)・槌骨(つちこつ)の3個になり、この順に内耳から鼓膜へ繋がる。ただ単に耳小骨といえばこの哺乳類の3個の骨を指すことが多いが、広義には他の四足動物の中耳内小骨(鐙骨または耳小柱)をも指す。

目次

耳小骨の種類

 ヒトのアブミ骨 * Head:アブミ骨頭 * Neck:アブミ骨頚 * Anterior crus:前脚 * Posterior crus:後脚 * Base:アブミ骨底

ヒトのアブミ骨

鐙骨

鐙骨 (あぶみこつ、Stapes) は、脊椎動物が最初に持った耳小骨。元は魚類において上下顎を脳函の内耳直下の位置から懸垂する舌顎骨hyomandibular)だった。ヒトではまさにの形をしているためこの名が付いた。しかし鐙のように環状になっているのは有胎盤類異節上目を除く)のみで、基本的な形状は桿状である。槌骨・砧骨を持つ場合でも内耳への接続は鐙骨が受け持つ。内耳がわで鐙骨の振動を受け取る箇所は卵円窓fenestra ovalis)と呼ばれる。鐙骨には鐙骨筋という小さな筋が付着しており、耳小骨の可動性を制限して強大な音が直接蝸牛に入るのを制限している。鐙骨が環状になっている場合、その輪の中を動脈が通っている。有胎盤類の中で異節上目のみがそのような形質を持っていないことは、異節上目がまず最初にその他の有胎盤類から分岐したとする説の根拠の一つとなっており、アメリカ自然史博物館はその説に従った展示を行っている。異節上目#系統と分類を参照のこと。

耳小柱

爬虫類鳥類が持つ鐙骨は特に耳小柱columella)とよばれることがある。耳小柱は内耳の卵円窓に接する近位部と鼓膜などに接する遠位部に分かれ、遠位の外耳小柱extracolumella)は軟骨性であり、哺乳類の鐙骨と相同なのは常に骨化する耳小柱近位部であると考えられている。

ヒトのキヌタ骨 * Body:キヌタ骨体 * Short crus:短脚 * Long crus:長脚 * Lenticular process:豆状突起

ヒトのツチ骨 * Head:ツチ骨頭 * Neck:ツチ骨頚 * Lateral process:外側突起 * Anterior process:前突起 * Manubrium:ツチ骨柄

ヒトのキヌタ骨

  • Body:キヌタ骨体
  • Short crus:短脚
  • Long crus:長脚
  • Lenticular process:豆状突起

ヒトのツチ骨

  • Head:ツチ骨頭
  • Neck:ツチ骨頚
  • Lateral process:外側突起
  • Anterior process:前突起
  • Manubrium:ツチ骨柄

砧骨

砧骨 (きぬたこつ、Incus) は爬虫類段階の単弓類が哺乳類に進化したときに獲得された新たな耳小骨である。元は哺乳類以外の四肢動物では顎関節の上顎側を構成していた方形骨quadrate)であった。とは衣などをのせて打つ台のことで、Incusとはラテン語のこと。その名の通り槌骨からの振動を受け止める働きをする。

槌骨

槌骨 (つちこつ、Malleus) は砧骨と同じく哺乳類になってから新たに獲得された耳小骨である。砧骨・骨の片方だけを持つ動物はいない。哺乳類以外の四肢動物の顎関節の下顎側を構成していた関節骨articular)に由来する。つまり、砧骨と槌骨を結び付ける関節は四肢動物本来の顎関節に相当する。鼓膜の振動を直接受け止める。

歴史

脊椎動物が水中にいる間は、外部の振動を内耳に伝えることはそうたいした問題ではなかった。空気の千倍の密度の媒体を伝わってきた振動は特別な伝達装置など無くともたやすく内耳に到達できたのである。むしろ、音波が内耳を通り抜けてしまうため、を用いて音をとらえ、聴覚を向上させている硬骨魚も存在する。魚類の中の一派が両生類となって陸上に進出したときに、空気という水とは比べ物にならないくらい希薄な物質の振動を受信する問題が起こった。これを解決したのが空気の振動を受け止めるための特別な膜状構造である鼓膜と、その振動を直接内耳に伝える鐙骨である。内耳の近くにあった噴水孔をふさぐ皮膚が鼓膜に変化したと考えられる。噴水孔は無顎類の鰓孔の痕跡で、咽頭から頭部側面に連絡しており、中耳・エウスタキオ管もこの連絡を保っているため、鼓膜内外の気圧調節に役立っている。噴水孔は軟骨魚類と原始的な硬骨魚類に残る。

鐙骨の元となった舌顎骨は、魚類においてまだ頭蓋と別の構造だった上顎下顎構造(第3鰓弓)を頭蓋に繋ぎ止める働きを持っていた第4鰓弓に由来する骨格構造であった。その後、皮骨性骨格要素によって上顎と頭蓋が固着し、下顎も靱帯と顎関節により上顎としっかり結びつくようになり、顎の支持という役割は小さくなった。そしてちょうど頭蓋の耳領域と顎の方形骨とをつないでいた舌顎骨が、内耳と鼓膜とを結びつける役割を果たすようになったと考えられている。

次の大々的な変化は爬虫類単弓類から哺乳類が進化するときに起こった。本来、上下顎間の関節は、上顎が方形骨、下顎が関節骨からなっていた。しかし単弓類では方形骨と関節骨が縮小し、頭蓋骨からは鱗状骨squamosal)、下顎からは歯骨dentary)が関節面に接するようになり、本来の方形骨-関節骨関節の外側同軸に鱗状骨-歯骨関節を形成するようになった。元々単弓類の盤竜類では聴覚があまり発達していなかったらしく、鐙骨は大きく頑丈で、現在のヘビムカシトカゲや祖先の魚類のように方形骨に直接接続していた。そして盤竜類が獣弓類に進化し、両生類や原始的爬虫類では背面近くにあった鼓膜を顎関節付近に移動(もしくは再獲得)させて再度聴覚を発達させる過程において、顎関節という役割をほぼ鱗状骨-歯骨に譲っていた方形骨と関節骨のお互いの関節を維持したまま、あらためて砧骨と槌骨として耳小骨に取り込んだのが哺乳類であると考えられている。つまり盤竜類で行っていた下顎からの振動伝達システムを踏襲して、関節骨-方形骨-鐙骨という伝達経路を引き継いだのが槌骨-砧骨-鐙骨であり、砧骨-槌骨間の関節は爬虫類段階での方形骨-関節骨関節と相同なのである。時に「爬虫類の顎関節は哺乳類の耳に取り込まれた」というような表現がなされるのはこの為である。

関連項目

 https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/f/f4/Auditory_ossicles_%28bovine%29.jpg/400px-Auditory_ossicles_%28bovine%29.jpg

ウシ中耳構造

1.槌骨 2.砧骨 2'.砧骨豆状突起 3.鐙骨 4.鼓膜 5.卵円窓 6.鼓膜張筋 7.鐙骨筋

鼓膜

 

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/3/32/Trommelfell.png/180px-Trommelfell.png

a:鼓膜
b:
ツチ骨
c:
キヌタ骨
d:
アブミ骨
e:
中耳

鼓膜(こまく)は空気中の音を捉えるための器官。陸上脊椎動物のうち、鼓膜は、哺乳類爬虫類鳥類に見られるが、理化学研究所東京大学大学院医学系研究科の共同研究グループの研究により、これらの共通祖先で獲得された器官ではなく、哺乳類系統と爬虫類・鳥類系統とでそれぞれ別の進化過程を経て独立して獲得されたものとみられている[1]

ヒトの鼓膜

中耳外耳の境目にある、直径8 - 10mm、厚さ0.1mmの膜で、耳小骨に音を伝える。正常時には光沢のある灰白色をしている。外耳側から順に、皮膚層、固有層、粘膜層の3層からなる[2]

慢性中耳炎では一般に鼓膜の穿孔が起こる。

また、鼓膜が中耳側に陥入して嚢胞を形成し、内部で上皮が増殖して真珠腫を生じることがあり、これを真珠腫性中耳炎と呼ぶ。真珠腫は進行すると、耳小骨を融解させて難聴を引き起したり、顔面神経を障害したりすることがある。

鼓膜も、皮膚と同じく再生することが可能である。大体1週間 - 10日程で再生する。

小さな子供が鼻水をすすった際に耳の奥へ溜まってしまう場合がある。この際は鼓膜に穴を開け吸い出すのだが、親が同意を求められた際に過剰に反応する場合がある。鼓膜が再生することが認知されていなかったり、聴覚は鼓膜だけによるものではないこと(鼓膜を損傷してもある程度は聴こえる)が理解されていなかった場合などがある。実際は上記の通り、再生するので過剰に反応する必要はない。

1.    ^ 哺乳類と爬虫類-鳥類は、独自に鼓膜を獲得. 理化学研究所. 20151111日閲覧。

2.    ^ 藤田郁代 (2010), 聴覚障害学, 医学書院, p. 48, ISBN 9784260021173

耳管

 

耳管(じかん、英語:Eustachian tube)とは、中耳(鼓室)と咽頭をつなぐ管状のである。鼓室(中耳の空洞)内の空気圧を、その場所の大気圧と等しくする役割や、鼓室内に出る分泌物を咽頭に排出する役割を持っている。これらの役割は、空気中を伝わってくるの聞こえを良くすることにもつながる。なお、耳管の表面に皮膚はなく、粘膜で覆われている。ギリシア語からそのまま、エウスタキオ管または英語からユースタキー管とも呼ばれる。

目次

概要

 https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/40/Ear-anatomy-text-small-en.svg/220px-Ear-anatomy-text-small-en.svg.png

ヒトの耳の構造。耳管は中耳から下の方向に伸びている部分。耳管は、さらに下へも続いている。

ヒトの耳管は、頭部の左右のほぼ同じ位置に1対存在する。左右それぞれ1本の管となっており、鼓室の下部から、咽頭と呼ばれる部分の中でもとつながっている空洞で鼻咽頭腔上咽頭)と呼ばれる場所へと続いている。なお、鼓室に近い側の約3分の1耳管骨部と呼ばれ、鼻咽頭腔に近い側の約3分の2耳管軟骨部と呼ばれ、区別される。また、上咽頭に存在する耳管の出口は、耳管咽頭口と呼ばれている。ちなみに、この耳管咽頭口の周囲には、他にも名称に「耳管」と付く部分がある。耳管咽頭口の周囲には耳管隆起と呼ばれる少し盛り上がった部分があり、ここには耳管扁桃が存在する。この耳管扁桃は、ワルダイエル咽頭輪Waldeyer咽頭輪)の一員を成している。

耳管の役割

耳管には、幾つか役割がある。ここでは、ヒトの耳管の代表的な役割について解説する。

鼓室内の圧力調整

鼓室(中耳の空洞)内の空気圧を、今いる場所の大気圧と等しくする役割がある。例えば、高速で走行する列車がトンネル内に入った時 [注釈 1] 、航空機で昇降した時 [注釈 2] 、高速エレベータが昇降した時など、その場所の大気圧が急激に変化する場面に遭遇することがある。もし、大気圧が急激に上昇した場合は、外耳道の方が鼓室よりも圧力が高くなり、こうなると鼓膜が鼓室側に押し込まれる形となり、これに耳小骨が鼓膜を押し返そうと抵抗するので、内耳に音を振動として伝えている部分が振動しにくくなるため、音の聞こえが悪くなる。逆に、大気圧が急激に低下した場合は、外耳道の方が鼓室よりも圧力が低くなり、この場合は鼓膜が外耳道側に押し出される形となり、今度は耳小骨が鼓膜を引き戻そうと抵抗するので、やはり伝音が上手くゆかなくなり、音の聞こえが悪くなる。つまり、外耳道内と鼓室内の空気の圧力が等しくないと、ヒトは聴力が下がってしまうわけだが、この内外の空気圧を等しくするという圧力調整に、耳管が一役買っているのである。なお、外耳道と鼓室との間に、あまりにも大きな圧力差が生じると痛みが出たり、さらには鼓膜などの破損もあり得るが、耳管はそれを防いでいるとも言える。

鼓室内への空気の取り入れ

上記の鼓室内の圧力調整と似ているが、ここで述べるのは、もっと長い時間、数年単位での話である。鼓室内に空気が入ることによって、乳突蜂巣が大きく発育することに寄与している。乳突蜂巣は、出生後に空気呼吸を行い、このために耳管を通じて鼓室へも空気が入るようになる。これによって、だいたい10歳〜12歳くらいで、ほぼ成人と同じ大きさにまで発育する。しかし、この時期までに中耳の疾患を繰り返した場合、乳突蜂巣の発育は阻害されてしまう。

鼓室内分泌物の処理

鼓室内に出る分泌物を咽頭に排出する役割を持っている。なお、耳管の機能が加齢などによって低下すると、鼓室内の分泌物を上手く排出することができず、分泌物が溜まってしまうこともある。

耳管の形状変化

ヒトの耳管は、成長と共に形状が変化する。具体的には、成長と共に、長く、そして立ち上がった時に地面対してより傾斜がついてくる。つまり、幼児の耳管は、成人に比べて短くて、地面に対してより水平なのである。ところで、急性中耳炎の感染経路の中では、まず咽頭などの上気道部に感染が起こり、それが、この耳管を経由して中耳に達したものが最も多いと考えられている。急性中耳炎が10歳以下の小児に多いのは、耳管の形状が成人とは違うことが一因となっていると考えられている。

関連項目

·         耳抜き

·         耳管開放症

注釈

1.    ^ この時発生する圧力変化を緩和するためにトンネルや車体の形状の工夫が行われたり、車内を気密構造にしたりと、様々な対策が取られてきた。ここは耳管についての記事なのでこれ以上の記述は行わないが、詳しく知りたい場合は、次のリンクを参照のこと。トンネルの形状については、「トンネル#鉄道トンネル」の記事などを参照。車体の構造については、「新幹線車両#車体」の記事などを参照。車内の気密化については、「気密性#環境」の記事などを参照。

2.    ^ 機体軽量化を主たる目的として、通常の旅客機の客室内は上空で約0.8気圧にまで減圧することを前提とした設計となっている上に、機外の気圧より機内の気圧が低くなることが許される設計になっていない。このため、大気圧が約0.8気圧を超える空港への離着陸を行う場合は、客室内の気圧変化が免れない。ここは耳管についての記事なのでこれ以上の記述は行わない。このことについて詳しく知りたい場合は、「与圧」や「旅客機の構造」の記事などを参照。

 

頚神経叢

 

頚神経叢(けいしんけいそう)とは脊髄神経から分岐し上肢のうちにへ繋がる神経叢の名称。

頚神経叢は脊髄神経から分岐し頭部・背中・肩部と上肢のうち鎖骨上腕前腕に繋がる腕神経叢と相互に連結しているためこれらを合わせて頚腕神経叢と呼ぶ。

目次

頚神経叢の構成

頚神経叢は第1頚神経~第4頚神経の前枝から構成されており、胸鎖乳突筋に覆われて側頚部にある。

枝は皮枝と筋枝に分かれる。

皮枝

小後頭神経C2C3)→ 後頭部

大耳介神経C2C3)→ 耳介後部および耳下腺付近

頚横神経C3)→ 側頚部および前頚部

鎖骨上神経C3C4)→ 鎖骨上下および肩

いずれも胸鎖乳突筋の後縁から皮下に現れ、小後頭神経は胸鎖乳突筋と僧帽筋との間を斜めに後上し、大耳介神経は胸鎖乳突筋の表面を上方へ行き、頚横神経は胸鎖乳突筋の表面を前方へ行き、鎖骨上神経は数枝に分かれ、鎖骨の表面を下方へ走り、全体として放射状に分散し上述の各分布区域の皮膚に行く。

筋枝

後頭筋群に枝を与えているほか、副神経と吻合し、C2C4を主体に胸鎖乳突筋と僧帽筋に、また頚神経ワナとして舌下神経と吻合しながら舌骨下筋群に枝を送っており、他に頚神経叢の筋枝として横隔神経C3C5)をあげられ、C4を主体にその上下の頚神経12本から構成され、頚神経叢を出ると前斜角筋前を下行し、胸腔に入り、心嚢縦隔胸膜の間を通り、横隔膜に達し(その時に、肺門前を通るものの迷走神経は肺門の後を下がる)筋に分布し、途中で心嚢と胸膜にも知覚枝を送る。

関連項目

·         頚神経叢ブロック

·         後頸三角

腕神経叢

 https://upload.wikimedia.org/wikipedia/ja/thumb/1/10/Subclavius_1st_part_ja.png/300px-Subclavius_1st_part_ja.png

右の部を切開したところの図。前斜角筋の後部から腕神経叢がでている。

腕神経叢(わんしんけいそう、brachial plexus)とは脊髄神経から分岐し上肢のうちに鎖骨上腕前腕へ繋がる神経叢の名称。

腕神経叢は脊髄神経から分岐し頭部・背中・肩部と上肢のうち後頭部・首・鎖骨に繋がる頚神経叢と相互に連結しているためこれらを合わせて頚腕神経叢と呼ぶ。

目次

腕神経叢の構成]

腕神経叢は第5頚神経~第1胸神経の前枝から構成されており、神経幹神経束3つからなる。

5、第6頚神経の前枝が合流し上神経幹、第7頚神経の前枝が中神経幹、第8頚神経と第1胸神経の前枝が合流し下神経幹を形成する。上・中神経幹からの枝(前部)が合流し外側神経束(C5C7)、上・中・下の神経幹からの枝(後部)が合流し後神経束(C5Th1)、下神経幹からの枝(前部)から内側神経束(C8Th1)が形成される。

外側神経束外側

筋皮神経C5~C7

外側神経束内側と内側神経束外側の合流部[編集]

正中神経C5~Th1)

内側神経束内側

尺骨神経C8~Th1

後神経束

橈骨神経C6~C8

腋窩神経C5~C6

腕神経叢の枝

腕神経叢の枝は大きく分けると、鎖骨上枝と鎖骨下枝に分かれる。

鎖骨上枝

肩甲背神経C4~C6

肩甲上神経C5

長胸神経C5~C7

鎖骨下筋神経C5

鎖骨下枝

·         胸背神経C5~C8

·         外側胸筋神経C5~C7

·         内側胸筋神経C7~Th1

·         肩甲下神経C5~C7

·         外側上腕皮神経

·         内側上腕皮神経

·         外側前腕皮神経

·         内側前腕皮神経

腕神経叢麻痺

·         原因は外傷、分娩麻痺、リュックサック麻痺、睡眠中の圧迫、腫瘍、肩関節脱臼、注射、手術などが考えられる。

·         上部麻痺(エルブ麻痺):C5-6の麻痺症状。三角筋上腕二頭筋麻痺、肩関節挙上・肘関節屈曲・前腕回外障害などの運動麻痺。C5-6領域の知覚異常。

·         下部麻痺(クルンプケ麻痺):C8-Th1の麻痺症状。手指屈筋・手内筋・手関節掌屈筋障害などの運動麻痺。C8-Th1領域の知覚異常。

·         交感神経の損傷でホルネル徴候を伴うこともある。

ヒトの神経の名称一覧

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ヒトの神経の名称一覧(ヒトのしんけいのめいしょういちらん)は、人間の神経の名称を一覧にしたものである。

人の神経系の分類は、基本的には、2種類ある。一つは、中枢神経系末梢神経系とに分ける分け方であり、もう一つは、体性神経系自律神経系とに分ける分け方である。

目次

中枢神経系

終脳 Telencephalon

中脳 Mesencephalon; Midbrain

後脳 Metencephalon

脊髄 Spinal Cord

末梢神経系

脳神経

脊髄神経

頚神経

胸神経

腰神経

仙骨神経

尾骨神経

関連項目

外部リンク